3、蓮


ある日、彼女が高校の同級生の男の子と噂になっているらしいと、ばあやさんが楽しそうに話してくれたのに、衝撃を受けた。


奥様とばあやさんは、彼女の淡い恋愛に寛容で、

むしろアドバイスするくらい積極的だった。


旦那様が俺に女遊びを教えたように、男を見る目を養えということだったのだろうと思うが、俺には我慢がならなかった。 

だが、それを表に見せることはできない。 

俺はそれから目をそらすように、ますます仕事や遊びに向かっていった。



このころにはもう、旦那様は俺を後継者にと決めていたようだ。


彼女は賢く、気配りもできて判断力もある。

だが、同時に優しすぎた。

周りを気遣って引いてしまうことも、とことん人を信じてしまうことも、

彼女の美点だが、経営者としてはマイナスなのだ。
彼女はよき妻にはなれるが、よき経営者には向いていない。
むしろ、そうしてしまうことは彼女を苦しめることになりかねない、

後にそう旦那様は俺に言った。
手元で愛しんでいた奥様もその点は同意見だったそうだ。


だが、奥様の方が旦那様より冷静だった。
俺を後継者候補から外すことはしないが、

より優秀な者がいたら、彼女と婚姻させ後を継がせると。
そんなことになったら、俺はどうするのだろう。
彼女を奥様と呼んで、これまでのようにずっとそばに居続けることができるのか・・・。


できるわけがない。


俺はさらに仕事に必死になっていった・・・。