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翌朝、私たちは、お互いの携帯電話で起こされた。


『テレビ見ろ! 不破が会見やってる!』
ユニゾンのように告げられた社さんと椹さんの言葉に、敦賀さんがテレビを付けた。



『京子さんとは、親同士が知り合いで、小さいころから一緒に育ってきたので、幼馴染というか兄妹のようなものです。 10枚目の記念の曲のプロモだったんで、幼馴染のよしみで京子さんに出演してもらいました。 この世界に入ってからお互いほとんど会ってなかったんで、近況とか昔話とか。 ガキの頃の話なんて人に聞かれて楽しいもんばっかじゃないし、部屋でひとしきり言いたいこと言って、愚痴ったり自慢したり? そんな感じだったのに、こんな風に熱愛スクープなんかされて、お互い迷惑っていうか、ばかばかしいっていうか。』
最初は丁寧に答えていたが、だんだんぞんざいになっていくところがショータローらしい。



「社さん、俺、キョーコと付き合うことになりました!」
「はあーー!!??」
私と電話を切っていなかった椹さんと社さんは同時に叫んだ。


「い、いつの間にそんなことに? しかもキョーコって? だってさっきまで最上さんって・・・。」
電話の向こうの社さんや椹さんも同じようなことを叫んでいる。
「お互い好きで、一緒に一晩過ごしたんだから、恋人だろう?」
とろけそうな笑顔でウインクされて、めまいがした。


『どういうことだ! ちゃんと説明しろ!』
『一晩って! 蓮! 最上君に何をしたんだ! まだ未成年なんだぞ!!』
社さんと椹さんがそれぞれに怒鳴っているのが聞こえてくる。


「のちほどゆっくり説明します。 そうだ、この機会に一緒に住もうか。 俺の食事も心配だろうし?」
『れーーん!!』

『おい!』
思わせぶりな台詞を二人に聞かせると、敦賀さんは二つの携帯の電源を落とした。



「今日の予定は?」
「2時からTBMですけど。」
「俺は1時から。 まだ時間あるから、もう少しゆっくりしようか。」
時計を見るとまだ8時ちょっと過ぎだけれども・・・。


「きゃあ!」
いきなり抱きあげられて、思わず声をあげてしまった。
「あの! な、なんですか?」
「ん? ソファーじゃゆっくり眠れなかったからね、寝室でもうひと眠りしよう。」


にんまりと笑う敦賀さんに、私は顔面蒼白だ。


――神様、敦賀様、どうか私の告白、取り消させてください・・・。
「却下だよ。」




数日後、マンションから仲よく手をつないで出入りする、蓮とキョーコの姿がスクープされて、不破尚の時以上に事務所が大騒ぎになってしまったが、蒼ざめるキョーコと対照的に満面の笑みの蓮に、事務所内の誰もが、謀ったな、と思ったとか思わなかったとか・・・。


                              FIN