「3問目は、タレント部門に所属している京子さんはバラエティにも出ているけれど、今後、演技とどっちを中心にやっていきたいのかな?」


「そうですね。 事務所に入った当初は何をやれるのか、
何がやりたいのか自分でもわかっていなくて、
敦賀さんに叱られたのだと思うのですが・・・。 
何があっても、高熱をおしてでも、倒れるまでやめないって、
本当にお芝居に真剣に取り組んでいらっしゃる姿を見て
すごくうらやましいと思いました。 
それに比べて、私自身を振り返ってみると、自分というものがない、
何もない空っぽな人間なんだなって思い知りました。 
だから、私もそんな風に自分を作っていけたらって思って・・・。
お芝居をやりたい、上手くなりたいって切実に思ったんです。 
ですから、タレントとしての仕事も楽しいのですが、できればこれからも
お芝居をやっていけたらなって思っています。」


「大丈夫。 君は空っぽなんかじゃない。 
それに着実に自分を育てていると思うよ。 
未緒のイメージでイジメ役づいて気にしたこともあったみたいだけど、
ちゃんと演じ分けもできているし、君はそれだけじゃないって
みんなもわかってくれると思う。」


「ありがとうございます。 未緒の印象が強いからっていうより、
まだまだ新人で未緒の役しか見せてないのだから
似たものを求められるのは当然だって、先生に言われたんです。 
イジメ役という役柄にそれぞれ違ったバリエーションをつけてこそ
スキルは磨かれるんだって。 たまたまアタリ役にめぐまれた
ジャリタレの役者気取りが仕事を選ぶなとまで言われました。」


「先生っていうのは、クー・ヒズリ? 来日されたときにサポートに付いていたみたいだけど、かなりシビアなことを言われたんだね。」


「はい。 でも、とても悩んでいたんですが、おかげですっきりしました。 
本当にすごくあったかい方ですよ。 包容力があって、やさしくて。
短い間でしたが先生との出会いは私の人生で最高の贈り物です。」


「ふうん。」
蓮の空気が重くなって、キョーコが敏感に察知する。


「あ、あの。 だいぶ走りましたけど、目的地はどちらですか? 
お昼お弁当を作ってきたので、まだ遠いようならどこかで一休みしませんか?」


キョーコの言葉に怯えが混じっているのに気付いて、
気持ちを立て直した蓮は、キョーコを安心させるように微笑んだ。
「もうすぐ着くから、弁当はそこで食べよう。」


――れーん。 クー・ヒズリにまで妬くなよ。 今一瞬本性がこぼれたぞ!!


社がモニターを見ながら心の中でツッコミを入れていると、
スタッフの一人がうれしそうに言った。
「お弁当楽しみですよね。 京子ちゃん俺達スタッフの分まで作ってきてくれたんです。 上尾さんの回で、もう料理上手なのは知れ渡ってますからね。 期待度高いです。」


――相変わらず気を遣う子だな。 本当にいい子なんだよなあ。 役柄によってガラッと変わる容姿も話題になってるし、この番組でも料理上手で素直で可愛いとこが評判になってるから、馬の骨がわんさか湧き出てるんだろうな・・・。 蓮もそろそろ本腰入れないと・・・。