『上尾を和食で接待』はさらに評価が高かった。



「先日上尾さんの好みをうかがいまして、和食がお好きということ
でしたので、今日は腕によりをかけて京子懐石を召し上がって
いただこうと。」

「京懐石じゃなくて、京子懐石なのね?」

「はい、京懐石より、もちょっと簡単な感じで。」

「そう、それは楽しみ。」



「初めて会ったときは、飛びこんできたあなたとぶつかったんだったわよね?」

「あの節は本当にすみませんでした。」

「新しいプロジェクトは聞いていたんだけど、あまりに突然だったし、
私も遅刻して急いでいたから・・・。」

「ああ、あは・・・。」

「敦賀君に荷物は持たせるし、鞄は放り出すしで、どんな子かと!」

「本当に申し訳ありませんでした。」

「でもね、あれから何度も頭を下げてくれたし、話してみると礼儀正しい
いい子だってことがわかりましたしね。」
「ありがとうございます。」



和風にしつらえたオープンキッチンで、上尾と会話をしながら
てきぱきと調理をするキョーコの様子は、素人目に見ても料理に
慣れているのがうかがえる。



「お待たせいたしました。」

「目の前で作ってもらって言うのもなんだけど、これ本当にあなたが
作ったのよねえ。 料理屋さん顔負けだわ。 見た目も美しいし・・・
お味も完璧。」

「そんなたいそうなものじゃないんです。 見よう見まねだったり、
バイト先の大将に教わったりなんですけど、まだまだです。」

「そんなに謙遜しなくても、いいわよ。 私に息子がいたら、
ぜひお嫁さんにほしいくらいだわ。」

「ありがとうございます。 うれしいです。」



照れながら、うれしそうに顔をほころばせるキョーコに、上尾もスタッフも
つられて笑顔になる。



放送後は料理に関する問い合わせも多く、
急きょ番組ホームページにレシピを載せることになった。
キョーコの手際の良さに、和服に割烹着という意外な姿もウケ、
ぜひ、和服姿でのドラマ出演をとの声もあがったらしい・・・。