『報われない恋?』
あの娘の出演している単発ドラマを観た。
主役ではなかったけれど、重要な役どころで出番も結構あった。
“事故で入院して、担当の医師を好きになって、
淡い恋心を抱きながら、婚約者のいる彼を
ひたすら想い見つづける女の子の役。“
恋愛なんて二度としないと拒否反応を示してきたあの娘の
全く不自然さを感じない、恋の演技。
俺とは違って、あの娘は愛する事を知らなかったわけじゃない。
だから、違和感が無くてもあたりまえなのか?
昔の事を思い出して演じたの?
不破を好きだった頃の気持ち?
それとも・・・誰か他に好きな奴でもできて、
そいつを思い浮かべたの?
いい演技だったのに、素直に認めてあげられない。
ドス黒い感情をこらえきれなくて、
つい、聞いてしまったんだ。
「この間のドラマ見たよ。恋する女の子の表情がすごく良く出てた。あの表情って・・・・・・」
不破の事とか、他に好きな奴が居るのかとか、
そんなこと聞けるわけがない。
と、口ごもった俺に
「ああ・・・・アレ、ですか。」
彼女は恥ずかしそうに小さく笑った。
「わかっちゃいましたか?やっぱり。」
それは、どういう意味?
だめだ。不安が広がっていく。
「全然表情が出来なくて、散々NG出されちゃって。呆れられるし、叱られるし。切羽詰まって、誰か救けてくださいって思ったら、敦賀さんが浮かんで・・・・」
「え?オレ?」
それって、俺を想ってあの表情してくれたってこと?
希望の光に浮上した俺を彼女は一言でたたき落とした。
「敦賀さんが嘉月で美月を見つめていた時の表情を思い出して、トレースしたら一発OKだったんです!」
・・・・・・俺が君を思い描いてしてた表情を、
君はそれと知らず、
しかも、そんな気持ちはみじんも持たずに
トレースしたってこと!?
蓮の中で何かが切れたブツンという音が、社にも聞こえた気がした。
「君が優秀な演技者だという事は改めてよくわかったよ。」
「あ、あの、敦賀さん?何か怒って・・・・」
「これから時間ある?
おいで。もうちょっと恋する演技について話そうか。うちで。」
「え?なんで?どうして、そうなるんですか?」
有無を言わさずキョーコを連れ去る蓮を
社は見送った後、ため息を吐くと、
おもむろにゴム手袋を装着し、携帯電話をだすとメールを打った。
『お前の気持ちはわかるけど、まずは告白しろ。
絶対に手は出すな。最悪キスまででやめとけよ。』
キョーコちゃん、バカ正直にもほどがあるよ。
あれじゃあ、蓮がカワイソ過ぎる。
もうそろそろ、少しはアイツの気持ちに気が付いてやってくれるかなあ。
『追伸、明日の入りは朝7時だぞ。遅れんな。』とメール送信完了。
「さて、俺も帰るか。」
明日の二人はどんなかな?
怒ってるか、悲観してるか。
二人とも笑っててくれるといいな。
fin
★★★★★
他のスキビスキー様みたいに夢を見たわけじゃないんですけど
今日めっちゃしんどくてひさびさに昼寝しちゃって、
娘からの帰るメールでたたき起こされて
ぼーっとしながら、何となく一気に書き上げました。
さあ、蓮。ついに告るのか?押し倒すのか?
このあと原作に忠実に進展しない、に1票。