米寿を迎えた母へ
米寿を迎えた母へ誕生日に電話をした。「お誕生日おめでとう!」「あら~、ありがとう。毎日楽しくやってま~す」昨年実家を処分し、母はサービス付き高齢者向け住宅(「サ高住」)へ入居した。8050問題だった弟と引き離し、母を一人サ高住に預けた。ほぼ雨が降らなければ毎日歩いて10分程の西新井大師に散歩に行く毎日を送っている。これは最近散歩に持っていくメモ。百人一首だ。サ高住で百人一首のゲーム大会があるらしい。負けず嫌いの母。入居当初は「今さら無理だわ~」と言っていたが、いつのまにかこんなメモを持ち歩いている。きっと母のことだから、お大師様の敷地内の池の端のベンチに腰を下ろし、淡々と暗記に励んでいるのだろう。母は植木の手入れが好きだった。今は小さなベランダに、いくつかの鉢を並べている。数は少なくなったが、毎日毎日水をやり、丁寧に育てている。「好きなことがあって良かったわ~」と植木の手入れが苦手な(いや、嫌いな)アタシに、笑顔で話す。88歳か。ちょうどあと30年後。こんな風に元気でいられるのだろうか。サ高住での毎日もいろいろトラブルはあるのだが、「わたくし、結構忙しいの」「毎日楽しくやってるわ~」ハリのある声で、屈託のない笑顔でそう語る母を心から愛し、心から敬い、心から信頼を寄せる。来月8年ぶりに出展する書道の展覧会、見に来てね。そして来月銀座ヤマハホールのエレクトーンの発表会も聞きに来てね。あなたから受け継いだ才能を私なりに磨いた結果を見てほしくて、息子にレンタカーの送迎を頼んだ。何があってもただでは起き上がらないしぶとさ、思いがけない困難もしなやかに立ち向かい、日々をこの上なく楽しんでしまう根っからのしたたかさ、これは母親譲りなのだろうか。もう少し娘に甘えて欲しいこともあるのだが、アタシが息子に甘えられないのと同様に、それは絶対無理!という母の笑顔が目に浮かぶ。88歳の母元気でいてくれてありがとう。笑顔でいてくれてありがとう。毎日を楽しく過ごしてくれてありがとう。私を生んでくれてありがとう。