「そこから風邪ひくよ」


あたしの、

穴あきジーンズの膝を指差して、ばーばは言った。



あたしは思わず吹き出した。



だってその言い回しがあまりにかわいかったから。

ばーばのそういうところ、あたしは大好き。



大好き、だった、



ねぇ ばーば

ほかにもいっぱい、いーっぱい あるんだよ。




幼稚園児のころのあたし、

しょっちゅうこわい夢を見てた。


夜中に目を覚ますと、

ばーばの布団のところへ行く。



「まみどーした? おなかが空いたのか?」


ねぼけて あたしは 「うん」 と答える。


「ちょっと待ってな! 今、おむすびこさえてくるから」


「うん」



そうやって ばーばはいつも

塩だけのおにぎりを作ってきてくれた。


ばーばの 塩むすび。


まっしろで しょっぱくて すこし丸っこい

三角になりきれなかったようなかっこうの ばーばの塩むすび。


やわらかくて 大好きだった。



「それ食べたら寝なさいね」



ばーばはいつも 子守り歌を歌ってくれた。



  ねーんねん ころりよ おころりよ


  ねぇちゃんは いいこだ ねんねしな



いつもあたしの味方をしてくれた ばーば。



いつも朗らかで、自分の欠点も ケラケラって笑って吹き飛ばす。


やわらかなパワーの持ち主だった。


ばーばの言葉、行動。

ばーばをつくっているものすべて

ばーばが生み出していくものすべて。


それが ばーばのすべて。



ばーば、 ばーばのそのすべてで今のあたしがいるよ。


ばーば、 ばーばのそのすべてがいつもあたしを守ってくれてたね。 



いまは からだが無くなってしまったけれど、

あたしが 生きていくことで

ばーばが してくれたこと、ぜんぶかたちになっていくよ。


いつもね なみだが止まらなくなるんだ。


ばーばのことを 思い出すと、

どうしても なみだが止まらない。


会えなくなって もう何年も経つのに、

あたしはまだまだ おこちゃまみたいよ。


泣いてばっかり。



ねぇ ばーば

あたしは 今でも穴あきジーンズで、


まっしろな塩むすびが大好きです。


暑い日が続いていますが、お変わりありませんか?


あたしは相変わらずで・・・


相変わらず


あなたのことを好きでいます。




会いたくて 無理やりに時間を割いてもらったあの日が懐かしいです。


ただ会いたい一心で あなたへ向かったあの日。


自分自身が充実していたからできたこと。


なのに、


今のあたしは自分の夢から逃げている。


自分を誤魔化してやり過ごしている。




そんなふうに 自分に素直になることさえ出来ないあたしには


すべてを受け止めて日々を生きているあなたが 眩しすぎる。


自分を甘やかして 流れに任せているあたしには


真っ直ぐに心の奥まで見つめるあなたの瞳が つらすぎる。




ただ あなたに会いたいだけなのに。


それを邪魔してるのが自分自身のプライドだなんて皮肉ですね。




あたしは 相変わらずです。


相変わらずにあなたが好きで、


相変わらずに臆病なんです。


あなたを好きになって こんなにも自分を見つめることになるなんて。


臆病な自分と向き合って、


こんなにも強い思いを感じるなんて。




あなたが好きです。




あなたに向かって真っ直ぐにそう言える日まで


ここであなたに手紙を書きます。


あなたに向かうあたしの 「Carta」 


今はただのひとり言だけど、


いつかあなたに伝えます。


その日まで


あなたを好きでいていいですか?