Aが嬉しそうに連日電話や可愛い絵文字を沢山使ったメールをしてくる。

俺は旅行の第一条件として、<プラトニック・ラブ>というのを伝えた。

Aはすんなりそれでいいよと応えた。

いきなり何かがあるのは俺にはハードルが高過ぎる。

あと出来れば日帰りプランでとも伝えてある。

まだまだメイコさん以外の女性との免疫は出来ていない。

Aからのキスだって思い出すだけでなんか身体の力が抜けてしまう。

少しずつ免疫をつけていきたい。

Aは俺に合わせてくれる。

有り難いコトだ。

大切にしなければという思いが自然と沸いて来る。

これが恋愛ってモノかな?

何だかわかりゃしないや。

でもとても嬉しい気分になるコトだけは確かだ。

メイコさんといてそんな風に思えていたのはいつのコトだったか思い出せない。

それほどメイコさんは酷過ぎた。

何もかもから逃げてばかりで言い訳のしっぱなしだった。

Aのコト、好きになっていくのかなぁ?
Rと電話してる時、告白された。





「ドリッパくんは私に振り向きはしない。だからもう諦めるコトにした。それには理由があってね、それなりに好きな人ができたの。少し前に中学の同窓会があったんだけど、そこで初恋の人にあって声をかけられたの。付き合って欲しいって。もう随分と恋愛してないからなんだかドキドキしちゃってね。ドリッパくんのコトが好きなのは多分変わらないと思う。だけど彼のコトを好きになるコトだって出来るんだと思う。ドリッパくん、私を引き止めるなら今が最後だよ?」





「そっかぁ。良かったじゃん。実は俺も中学の同級生と今仲良くしてるんだ。Rとは一度ちゃんと話をしなきゃと思ってた。俺たち、良い友達になれると思うんだけど?」





「そうだね。元々友達だったんだしね。良い友達になれると思う。彼と上手くいかなくなった時なんかは相談にのってくれる?」





「もちろん。」





その後もこれまでのいろんな話をした。

時間が経つのが凄く早く感じた。

良い関係が築けて良かった。

Rが彼と上手くいくコトを心から応援したいと思う。
少し前にAと会った。

Aが会いたいと言ったからだ。

特に断る理由はない。

薬中のおかげでイライラは治まったからいいけど、
治まってない時はずっとツレに飲みにでも行けないかと連日のように誘っていた。

が、ことごとく断れ続けられた。

30代にもなれば責任持った仕事を持たされて当たり前で連日残業。

そして週末は平日に会えない分、彼女とデートというのがお約束のパターン。

そんなんもあって、Aからの誘いはちょっと嬉しい部分もあったかもしれない。

でも会ったところでどこかに行くワケでもないので俺の大好きなスタバでおしゃべり。

カフェ・モカ、2杯も飲んじゃいました。

会話の途中、おもむろにAがバッグの中から何冊かの旅行雑誌を出しました。





「旅行行かない?こんなコト言ったらドリッパくんを傷つけてしまうかもしれないけど、前の奥さんはもうドリッパくんのコト好きじゃないと思うよ。もっと言うなら浮気した時に好きじゃないコトに気付いたんだと思うよ。」





「やっぱりそう思う?」





「やっぱりって?・・・ドリッパくん、そう思ってたの?」





「そこまで鈍感じゃないよ、俺。ただそれに気付いた相手が気に食わないって話。スンゲー格好良いヤツとかならわかるけど顔デカくて茶髪にチリチリパーマの白髪混じりのロンゲのチャラチャラしたダサイヤツだったってコトが解せないんだよ。しかも最初の1回目は犯してきたようなヤツなんだよ。まぁ、それに関しては彼女が犯されたい願望がそもそもあったんだろうね、そいつに。でもそんなヤツ以下に見られてたなんて思うとね、なんだかねぇ・・・・・」





「もういいじゃん。ドリッパくんが鬱状態なの見てるのツライ・・・。中学の時、誰よりも目立っていたドリッパくんをそんな風に追い込んだ奥さんが私は許せない。強迫性障害のコト、専門書買って読んだよ。ある程度は理解したつもりだよ。もちろんネットで、いろんな人の症状も調べてみた。私じゃいけない?私はドリッパくんのために一生懸命になれるよ。ドリッパくんの許容出来る範囲からでいい。一緒にいろんなところ行こう。旅行しよう。きっと気晴らしになると思う。」





「うん、そうだね・・・・・」





Aは自分も傷ついたからなのだろうか?

俺が何を求めてるのかよくわかってくれていた。

メイコさんには言っても何一つとしてやってくれなかったコトだ。

とりあえずその日は旅行の具体的な話まではしなかった。

でも、旅行行こうかって、俺からも誘った。

Aは嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑って喜んでくれた。

その顔がメイコさんにダブって見えた。





メイコさん、メイコさんはもう俺のコト好きじゃないでしょ?

俺、次のステップに多分だけど進むからね。