再読キャンペーン中なので(笑)。



森博嗣『冷たい密室と博士たち』です。





僕の森博嗣ファン歴の原点はここでした!!!!!




冷たい密室と博士たち (講談社文庫)
森 博嗣
講談社
売り上げランキング: 38769



内容(「BOOK」データベースより)
同僚の誘いで低温度実験室を訪ねた犀川助教授とお嬢様学生の西之園萌絵。だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室の中で、男女二名の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人は、どうやって中に入ったのか!?人気の師弟コンビが事件を推理し真相に迫るが…。究極の森ミステリィ第2弾。

























森博嗣のS&Mシリーズの、デビュー作『すべてがFになる』(以下『F』)に続く2作目です。


『F』は書いたのは4作目ということなので、実質的には今作が処女作のようです。





僕、実は最初に『F』を読んだとき、なんだか意味が分からなかったんですよね・・・。


なんて言うんでしょう。ネタが大きすぎた、というか、現実離れしすぎていた、というか・・・。


僕が『F』の素晴らしさに気づいたのはS&Mシリーズをどんどん読み進めていったその道の途中だったと思います。たぶん5~6作目ぐらいまで行ってから振り返って見てようやく「あれは凄かったんだ』と気づいたんですよね。



そういう理由で、『F』を初めて読んだあと、森博嗣を読み進めていこうという気があんまりなかったんですよ。でもまぁシリーズ物だし、ヒマだからもう少し読んでみるか、と思って、とりあえずブックオフで100円で買ったのが今作『冷たい密室と博士たち』です(僕は保存しておく気がないような作家の本はブックオフで買うことがよくあるんですよ)。





で、今回、再読してみてですね、思い出したんですよ。


僕の森博嗣ファン歴の原点が今作であった、ということに!





今作の内容としましては、寒冷条件下のシミュレーションのための実験施設の中で密室殺人が起きる、というものでした(ザックリ、笑)。



どうしても『F』の次だからインパクトに欠けてしまうというか、地味な印象を与えてしまうと思うんですが、これが中々どうして森博嗣作品の中でも1、2を争うぐらい、緻密な論理展開による解決にこだわった作品だったと思うんですよ。



初読のときはこの論理展開にやられました。複雑な事件のように見えて、もう何がなんだか分かっていなかった僕ですが、解決編を読んだときにその推理が極めてシンプルであった点に深く感動してしまったんですよね。「なるほど!やられた!」と。



今作は衝撃度もほとんど無いし、面白みというか特異度も低いので、おそらくそういう理由で評価されていないのだと思うんです。でもこれを評価しないのは勿体無いなぁ。



森博嗣作品の中で、動機が一番自然だと思うのも今作です。他の作品はなんだか「天才ゆえの動機」のような、凡人には理解できない動機も多いんですが、今作はしっかりと伏線を張って、その動機が読者にも想像できるようにフェアに情報を提出しつつ、読者が納得できる動機というものを上手に提出していると思うんですね。そういう点でもやはり面白い!そしてちょっと切ない。




ある意味この作品の根底にあるものは、容疑者X氏による献身的な行為にあると言えます。ん、この発言は僕のオリジナルですよ?←









ううん、やっぱり僕はこれ、好きですね。


再読した結果、もしかしたら『F』よりも好みかもしれないとすら思いました。もう少し、途中の展開が面白かったら(刺激的だったら)、もっと評価は良かったかもしれません。





ラストの犀川先生のつぶやき


「内緒と沈黙はどう違う?」



に対する解答は、S&Mシリーズ屈指の名言だったと思います!




いやはや、どこまで再読できることやら。




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