久しぶりにミステリ以外のことも書いてみましょう。というか、珍しく劇場まで映画を見に行ったので健忘録として書きたいだけです。すみません。(そもそも最近の僕のブログは本格ミステリ書評を謳っているわりにいつの間にか道尾秀介が多くなり本格ミステリの書評ではなく広くミステリについての書評になってきているのもまた事実ではありますがその件についてはいずれじっくりと話し合いましょう、笑)



というわけで夏川草介の『神様のカルテ』を読んで、映画も観てきました。



神様のカルテ (小学館文庫)
夏川 草介
小学館 (2011-06-07)
売り上げランキング: 47


内容(「BOOK」データベースより)
栗原一止は信州にある「二四時間、三六五日対応」の病院で働く、悲しむことが苦手な二十九歳の内科医である。職場は常に医師不足、四十時間連続勤務だって珍しくない。ぐるぐるぐるぐる回る毎日に、母校の信濃大学医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば最先端の医療を学ぶことができる。だが大学病院では診てもらえない、死を前にした患者のために働く医者でありたい…。悩む一止の背中を押してくれたのは、高齢の癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった。二〇一〇年本屋大賞第二位、日本中を温かい涙に包み込んだベストセラー、待望の文庫化。
















う~ん、じゃあまずは本のほうについて書いてみますね。内容は上に詳しく書いてますから省きますけど、作者の文体について考えてると、森見登美彦のフォロワーのように言われてますがまぁそれも仕方がないかな、という感じは確かにしますよね。森見登美彦の独特の言い回しに似たような書き方が、夏目漱石の影響ですという言い訳を各所に散りばめながら平然と書かれているように思えます。加えてカバーイラストに中村祐介を採用している時点で、これはもう出版社サイドも狙っているなという気がして少し僕としてはイラッとしたんですよ。



でもそれを考えても僕としてはなかなか画期的な本だとも思うんです。テレビのドキュメンタリー番組だとか映画や小説とかで取り上げられているような最先端医療や難病の子供とか、ある意味で医師の花形のようなところに敢えて光を当てずに、ロマンチシズムのない地味な地域医療・終末期医療にスポットライトを当てて、あぁ地域医療も悪くないな、と思わせてくれるにはピッタリの本じゃないですか。地味ですよ。ほんとに地味です。本を読みながら、お前、金もそこそこ貯まってるんだろうから車ぐらい自分の車、買えやとか突っ込んでしまいましたが、それでも地味に変化のない日常の中でジワジワとしみ込んでくる悲しみや重責を乗り越えていく主人公・一止の姿は、医学生の僕としては感涙ものでした。





細かいことは言うな。

これが職業ロマンじゃないか。





そりゃ、こんなにかわいい奥さんなんて現実にはいないよ。こんなに変人ばかりの家もないよ。そもそもこんなに変なしゃべり方する医者なんていないよ。なんでこんな変なヤツがモテモテなんだ。リアリズムのない世界で医師のリアリズムを淡々と書いているという意味で、説得力のない浮ついた本に見えるかもしれないですけど、でもそれでも一止は格好いいですよ。大学病院に行って最先端の医療を学んで現在では治せないような病気の治療法を開発して将来的にたくさんの患者さんを助ける未来と、今の地方病院で馬車馬のように働いて無力感を味わいながら消えていく命を看取り続ける人生との狭間で散々悩んで苦しんでそれでも最後、病院からの帰り道で奥さんのハルと歩きながら「これでいいのだ」と天啓が射すシーンは僕にとって感動的な名シーンでした。あぁなんて良い本を読んだんだ、と胸が熱くなりました。これが僕の『神様のカルテ』の感想です。(ちなみに今は2も出てますが、僕は未読です)









で、映画ですよ。8月27日封切りでした。で、僕はサークルの後輩の女の子と2人で29日に見に行きました。デートみたいですけどそんなにいいものではありません(笑)。月曜のお昼に行ったので来ている客は僕みたいな夏休み真っ盛りの大学生かおばちゃんたちだけでしたね。3日目にしてはお客さんが結構少なかったので興行収入が気になるところです。


僕・・・宮崎あおいが大好きなんですよ~。もう無茶苦茶かわいいじゃないですか。本を読んだ時点で、これは宮崎あおいのやるべき役だなぁと思ってニヤニヤしてました。でも思ったよりも落ち着きすぎているというか、原作のハルはもっとピョンピョンしてるイメージなんですが、宮崎あおいらしい、清楚さが目立ちました。最初のほうはそこに少し違和感を感じてしまいましたが後半では慣れました。



映画の内容は基本的に原作に忠実でした。若干、家(古い旅館を利用した共同宿舎のような家)の記述が少ないので学士殿とかの影が薄いです。という理由で原作を読んでない人からすると、お前ら誰だ、って感じかもしれません。ましてや学士殿が故郷に帰るシーンとかも、もっと学士殿の文学オタなところを披露してからじゃないとイマイチ面白みがなかったと思うんですよね~。なんだか唐突でした。でもまぁ感動的な仕上がりにはなってたと思います。映画は音楽があるところが強みだなぁと改めて思いましたね。笑いどころもしっかりとあって、観客のおばちゃんたちが爆笑してました。泣きどころも数か所あって、僕は泣かなかったですけど周りの人たちは泣いてました。一緒に行った後輩の女の子も泣いてました。



まぁ僕は演技の良し悪しは良く分からないので特にそこについては言及しませんが、僕は加賀まりこさんの演技がとても良かったと思います。加賀まりこさんが演じる末期がんの患者の遺書は、ズルイなぁと思ってしまうほど泣かせにきてました。あれはズルイです。ギリギリ泣かなかったですけど泣きそうでした。原作には無かった「神様のカルテ」というフレーズも出てきました。あぁ、神様のカルテってこういう意味だったのか、と理解したところでググッときました(我慢しました)。



で、・・・あれ!???


俺が感動した部分がないっ!!!


病院からの帰り道で「これでいいのだ」と思いいたるシーンが映画にはありませんでした。なんてこったい。ずっとそのシーンがくるのを待っていたのに!!それが一番ショックな出来事でした。う~ん、あのシーンは必要なシーンだったと思うんですけどね。



他にもそもそも一止の役は桜井君でよかったのかという疑問とか、湧き出る疑問はいくつかありますが、でも自分の実感と周りの観客たちの反応を見る限り、みんな満足していたようです。一緒に行った後輩は「デボラさん、あたし、バレないようにしてましたけど、3、4回は泣いてました」って言ってました。地味な原作の割に、効果的に泣き所を作っていたので、僕は映画として評価されていいと思います。まだ観てない方はぜひ行ってみてはいかがでしょうか!?


そのうち、『神様のカルテ2』も読んでみますね。たぶんこれも映画化するんだろうなぁ。映画化、簡単そうだし(笑)。



神様のカルテ (小学館文庫)
夏川 草介
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