法月綸太郎の『生首に聞いてみろ』です。




結局タイトルが一番素晴らしかったっていう(笑)。


生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)
法月 綸太郎
角川書店
売り上げランキング: 126793



<内容>
過去に一世を風靡していた前衛的な彫刻家・川島伊作が、死期を間近に感じ、一度は決別していた自らの創作活動を強い意志で再開する。愛娘の江知佳をモデルにした新作彫刻は、人生の全てを捧げるほど制作に心血が注がれ、石膏直取りによる人体彫刻は見事に完成する。しかし、川島伊作が病死した直後、頭部が何者かの手により切断され持ち去られてしまう。その謎の解明を親族に依頼されたのが法月綸太郎だった――。
首を切り取られた石膏像が意味することは、悪質ないたずらか、それとも江知佳への殺人予告なのか?三転四転する謎に迫る名探偵・法月綸太郎の推理の行方は!?幾重にも絡み付く悲劇の幕がいま開く。本格ミステリ大賞受賞作。



















ふむ・・・法月綸太郎ですよ。僕は割とこの人、好きなんですけどね。初めて読んだのがコレでした。読んだのは高校生の時ですね。もう7~8年前でした。もう内容はほとんど覚えてなかったので(唯一覚えていた内容が、彫刻家の娘の「江知佳(エチカ)」という名前だけでした、笑)、久しぶりに再読。真相もすべて綺麗さっぱりと忘れていたのでほぼ初読という感じでした。




まぁあらすじは上のやつを見て頂くとして、この作品の雰囲気らしきものを伝えるとしたら、作品全体から「本格ミステリとは、かくあるべし」みたいな雰囲気がイヤってほど伝わってきます。たぶん新本格を担うものとしてのプライドかけて書いたんでしょうね。安定感があります。でもそれが作品全体を貫いている古さと地味さの原因になっているようにも見えます。伏線も綺麗に張ろうとしているのは分かるんですけど冗長な上に、自然に織り込もうとしているがゆえに不自然で、相関図も複雑で、その割りに事件の真相は見抜きやすいものになってしまいました。そして内容もどうにも薄い感じが出てしまっていると思います。エッセンスは充分に盛り込まれてると思うんですけど、それが美味しくないんですよね~。




たぶんミステリの評論家の人たちは(本格ミステリ大賞を受賞していることから考えても)、今作の伏線の張り方や論理の緻密さを高く評価したんだと思うんですけど、それでは一般読者の支持は得られないんじゃないですかね。もっと動きのある内容にしたほうが一般ウケはいいと思います。読者が(というか僕が)ミステリに求めているのは驚きだと思うんですよね。「驚愕の真実」とかそういう驚きじゃなくてもいいから「こんなにバラバラな点がここまでキレイに繋がるなんて」とかそういう驚きでもいいから、驚きたいんですよ。そういう観点からすると今作は「まぁ結局はそこらへんの真相に落ち着くよね」って感じだったんですよね~。




あと、主人公の法月綸太郎のキャラがどうにも今までのと違うような気がしてならないんですよね。少し頭悪くなったんじゃないか?こんなに右往左往するキャラだったかな。もうちょっと色々見抜いてる人だと思ってましたけど。そしてもっと色々と悩んでるのが法月綸太郎だと思うんですけど、今回の法月綸太郎はただの30代男性って感じでした。





で、タイトルの『生首に聞いてみろ』ですけど・・・









生首に何を聞いたの??


って思いました(笑)。


結局、生首なんてほとんど出てこなかったし。

このタイトルなら、生首を見てみて、そこに残された小さな証拠から犯人が分かる、みたいな感じだと思ったんですけどね~。なんかタイトルは僕好みで良かったんですけど、内容に合ってないような気がします。



法月綸太郎作品、これからも読むとは思いますけど、これだったら内容はムリヤリでも衝撃度のあった『密閉教室』のほうが良かったです。




生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)
法月 綸太郎
角川書店
売り上げランキング: 126793














読んだ方・読みたいと思った方はクリックお願いします!!
人気ブログランキングへ