米澤穂信の『折れた竜骨』です。




特殊設定ミステリ!!

これ、すっごい!!


折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)
米澤 穂信
東京創元社
売り上げランキング: 23698




内容(「BOOK」データベースより)
ロンドンから出帆し、波高き北海を三日も進んだあたりに浮かぶソロン諸島。その領主を父に持つアミーナはある日、放浪の旅を続ける騎士ファルク・フィッツジョンと、その従士の少年ニコラに出会う。ファルクはアミーナの父に、御身は恐るべき魔術の使い手である暗殺騎士に命を狙われている、と告げた…。自然の要塞であったはずの島で暗殺騎士の魔術に斃れた父、“走狗”候補の八人の容疑者、いずれ劣らぬ怪しげな傭兵たち、沈められた封印の鐘、鍵のかかった塔上の牢から忽然と消えた不死の青年―そして、甦った「呪われたデーン人」の襲来はいつ?魔術や呪いが跋扈する世界の中で、「推理」の力は果たして真相に辿り着くことができるのか?現在最も注目を集める俊英が新境地に挑んだ、魔術と剣と謎解きの巨編登場。

















米澤穂信ですよ!僕は『インシテミル』だけしか読んだことなかったのでこれで2作目でした。


僕としては『インシテミル』がイマイチだったので(ああいうゲーム系はどうも食傷気味ですね)、それ以来遠ざけていたのですが、今回はタイトルに惹かれて思わず図書館で予約して借りてしまいました。


事前に内容の情報を全く入れてなかったのでどんな話かは全く知らなかったんですけど、ファンタジーだったんですね。

あとがきで作者が語っているとおり、内容は『特殊設定ミステリ』という部類に入るものらしく、現実ではありえない状況設定で起こった殺人事件を論理の力で解決する、というジャンルのものです。







舞台は12世紀のヨーロッパで、この世界には魔法や呪術が存在しています。


呪いをかけて人に殺人を犯させたり、姿を消したり、記憶を消したりすることもできますし、もしかしたら水の上を歩いたり空を飛んだりすることもできるかもしれません。



そんな『なんでもあり』の魔法の存在を認めた上で、それでもなお犯人はコイツしかいない、ということが導き出せるのか。




「魔術や呪いが跋扈する世界の中で推理の力は果たして真実にたどり着くことができるのか?」


なんていう、素敵なキャッチフレーズもついております!!!

あぁ、このキャッチフレーズ、とても良いですね!!!!

こういうミステリがとても好きです。










内容をザックリと説明すると
(長い話なので、Amazonに書いてあったあらすじをコピペしつつ、ちょこちょこ解説を加えていきます)

ロンドンから少し離れたところにある二つの島—ソロン島と小ソロン島を治めるエイルウィン家の領主の娘であるアミーナは、父ローレントが魔術の使い手である暗殺騎士に狙われているという情報を持ってきた騎士ファルクと従士の少年ニコラと出会いました。


この地には「呪われたデーン人」という、不老不死で、どんなことをされても、首を切り落とされない限り死ぬことはない民族がいて、その呪われたデーン人がいつかソロンを攻めてくる日がきっと来る、という伝説が残っており、ソロンを治めている父ローレントは不安に思っています。


そして「呪われたデーン人」の襲来を予測していた父は、ファルクの言葉を信じ、暗殺騎士の襲撃に備えようとしましたが、翌日遺体となって発見されました。ファルクの魔法により、暗殺騎士が魔法で誰かにローレントを殺させた、ということが分かりました。



魔術により操られた人(「走狗(ミニオン)」と言います)は、本人の意思とは全く関係なく、ローレントを殺したのです。またそのことをその人は覚えていません。そしてそれはある理由から、八人に絞られました。

その八人はあまりに個性的な面々ですが、それぞれ色んな特徴があります。その特徴や個性、アリバイなどを駆使して犯人を指摘するため、アミーナはファルクたちとともに犯人探しをしますが、そこに恐れていた「呪われたデーン人」が本当に攻め込んできます。刺されても死なない、海に沈んでも死なないデーン人たちと闘いながら、論理の力で犯人を突き止める。

というお話でした。なんか説明下手ですね(笑)。









もう読みながら途中から大興奮しました。

てっきり噂だけ残ってはいるけどデーン人なんて本当に攻め込んできたりはしないだろう、と思ってたんですが、攻め込んできたんですよ!70人ぐらい!!で、街の人達をぶった切りまくっていくんです。腕力も半端じゃなくて、もう怪物なんですよ。街の人たちを剣で半分に切り刻んだりするんです。化け物!!!で、それを迎え撃つアミーナ側に仕えている傭兵たちがまたおかしなメンツで特殊能力使いまくりでそれに反撃を加えるんですよ!



もうファンタジーすぎる!!!


いや、素晴らしい活劇でした!ミステリ要素以外に久々に熱くなれました!バトルものなんて久しぶりに読んだ気がします。


そしてその戦争の中に、犯人を導き出すヒントが多少なりともあったりするんですよね~。そういうところも素晴らしかったです。








で、最後の犯人の指摘も良かったですね~。こういうのがたまらないです。色々な特殊設定ありまくりな中で、これぞという理由をつけて一人ひとり犯人を除外していくのがスリル満点ですね。そもそも犯人は魔法にかけられたせいで自分が犯人であることを知らないんですよ。しかも「自分が犯人だとバレないように」という文言のついた魔法なのでバレないように苦心しているんですよ。それもまた良い。

そして最後にどんでん返し!!

イイネ!!

もうお腹いっぱいです。続編とかないの!?って思っちゃいます。でも多分これの続編は難しいかもしれないですね。

第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)!!
あぁ、そりゃそうでしょ。こんな力作書かれてしまったら。
うんうん、傑作だったなぁ。最初は読みにくかったけど(そもそも登場人物の名前がカタカナのものは苦手です、笑)。


まぁ犯人が消去法で導かれたような感じが僕としてはムムムと思ってしまうところもありましたが(もっとビシッと決められなかったんですかねぇ)、それでもスケール感が良かったですね。細かい記述もちょっと細かすぎたかも??でもこんなミステリはあんまり無いような気がします。不思議な名作でした。





というわけでお薦めしておきます!!
そして俄然、米澤穂信に興味を持ち始めたのでとりあえず図書館で『さよなら妖精』と『氷菓』を予約しておきました(^o^)丿



折れた竜骨 (ミステリ・フロンティア)
米澤 穂信
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