石持浅海の『セリヌンティウスの舟』です。







石持浅海に外れなし!!!


ですな。



セリヌンティウスの舟 (光文社文庫)
石持 浅海
光文社
売り上げランキング: 415141



内容(「BOOK」データベースより)
大時化の海の遭難事故によって、信頼の強い絆で結ばれた六人の仲間。そのなかの一人、米村美月が、青酸カリを呷って自殺した。遺された五人は、彼女の自殺に不自然な点を見つけ、美月の死に隠された謎について、推理を始める。お互いを信じること、信じ抜くことを、たったひとつのルールとして―。メロスの友の懊悩を描く、美しき「本格」の論理。






















僕は今のところ、石持作品は

『月の扉』と『扉は閉ざされたまま』の二つしか読んでないんですが、

いやー、外れがないですね。

僕の好きな世界観です。

毎回、事件の発端が捻くれてて、古典的なミステリの手法とは一味違う切り口を示してくれています。











今回は仲の良いダイビング仲間で飲み会をしてみんなが酔い潰れて寝てしまったあとで、その中のある女性が一人静かに、青酸カリを飲んで自殺してしまうことから始まります。














遺書もあるし、警察の見解も司法解剖の結果も間違いなく自殺。

これは明らかに自殺。

自殺に見える。

自殺に見える。










四十九日で集まった仲間たちは彼女の死について語り合う。

そのとき、自殺現場の写真を見てると不意に状況に違和感を感じる。

なんだろう、この違和感は。

「警察は自殺とみなしている」

でも

「警察が知らない事実を自分たちだけは知っているじゃないか」

青酸カリの瓶の蓋がきちんと閉まっている。














「彼女はいつ青酸カリの瓶の蓋を閉めた?」

青酸カリを飲んだなら即死のハズ。

たまたま即死しなくて蓋を閉める時間があった??

では即死していたら青酸カリの蓋は開いたまま??

それでは同じ部屋にいた仲間たちも巻き添えにならないだろうか??

彼女が仲間を巻き添えにしようとしたりするだろうか。

・・・なんだ、この違和感は。

本当に彼女は自殺だったのか。















そしてみんなで夜を徹して推理合戦を始めるっていう話でした(煽りすぎた?笑)。




いやー、面白かったです。

僕はこういうのすごい好きですね。

たぶん推理合戦が好きなんだと思うんですが。

『扉は閉ざされたまま』が密室のドアをひらくことなく事件の概要を推理する話であったのに対して、

今作は写真とわずかな手掛かりによって過去の事件を推理する話。

普通の人は見逃すようなホンの小さな引っかかりをもとにみんなが事件を推理していきます。

その根底にあるのは仲間を信じるという善意。

こんなに善意にまみれたミステリが他にあるんだろうか、というぐらいにみんなが互いを信じ続けるのがとても印象的でした。
















タイトルは『走れメロス』でメロスを信じて待ち続けた親友セリヌンティウスと掛けられているわけですが、そこが余計だったような気もします(笑)。

このたとえのせいで少し物語が作り物っぽくなった気がします。

まぁ推理のために構築された人間関係とか言われてしまいそうですね。

そして今回もやはり動機が弱いか・・・。

そんな理由でそんなことするか??

とは思ってしまいます。

僕はミステリは知的ゲームだと思ってるので全く気になりません(笑)。

派手な事件を好む人はあんまり好きではないでしょうが、僕はこういうの大好きです。

200ページちょいしかないのでサッパリとスッキリと読み切れます。

こういう作風についていける人だけどうぞ。

僕はもっと石持浅海、追っていきたいですねぇ。












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