◎あらすじ
北海道に住む大学生デボラの両親が別居することになった。決して仲が悪いわけではない2人が別居に陥った驚愕の理由とは?そしてT市の家に隠された恐ろしい秘密とは?ミステリ書評を趣味にしているデボラが送るホームサスペンス(コメディ)、今ここに開幕。




◎登場人物
デボラ・・・この物語の語り手。「僕」。北海道S市に住む医学生。兄弟が他に3人いる。
母・・・デボラの母。病気のため、家から出られない。
父・・・デボラの父。外科医。
祖母・・・父方の母。T市に住んでいる。2年前に夫を失う。











祖父が死んだのは2年前だ。僕はいわゆるおじいちゃんっ子で、祖父から買ってもらったゲーム機は数知れないうえ、毎年お年玉の総額の過半数は祖父からもらったものだった。僕には兄弟が他に、姉、弟、妹の3人がいるが、祖父が一番溺愛したのは紛れもなく僕で、僕が医学部に入るために浪人していた頃は僕のことが心配すぎて当時住んでいたT市からS市まで車を1時間走らせしょっちゅう様子を見に来ていたほどだった。

祖父は恐ろしいほどのヘビースモーカーで、よくタバコで作ったドーナッツ状の煙の輪っかを僕に見せてくれた。その嗜好がもたらしたものかどうかはハッキリとは言えないが、呼吸器系の病気を10年以上前から患い、何度かの入退院を繰り返したのち、外科医の父が務めるS市の病院で2年前の11月に息をひきとった。

祖父が死んだあと、T市に一人残された祖母の生活を誰もが不安視したが、祖母は祖父との思い出の家を離れたくないとの想いからT市に残り一人暮らしを始めた。僕や僕の家族は月に1度、最低でも3か月に1度は祖母の家を訪れ、買い物や掃除などを手伝うようになった。

僕の家はS市にある一軒家であり、元々どこかの弁護士が事務所兼自宅として建てた家を中古で買ったもので家の表側にドアが2つある。左のドアは普段、生活に使っているドアで玄関から伸びた廊下が居間や2階へ続く階段へと続いている。右のドアは事務所として使っていたスペースにつながるドアであり、中に入ると簡単な窓口のような造りすらある。2つのドアは、自宅用のドアから2階へ行き、違う階段を下りると事務所用のスペースに至るというふうに繋がっているが、僕たちが住むようになってからは事務所用のドアにはカギをかけて使えないようにしており、事務所として使っていたスペースはもっぱら物置として使われている。

家の概観はさすがに事務所兼自宅として建てられただけに割と大きいが、築20年を越しているためあまり綺麗とは言えず、父が外科医であるという理由で僕の家がさぞかし立派なものだろうと思って訪ねてくる友人たちはいつもなんと言っていいか分からない表情を浮かべて「あー、やっぱり外科医の家は大きいなぁ」などと大きさを褒めるのみであり、家の中の造りもあまり機能的とは言えないもので父・母・子4人の6人が住むにはあまり便利ではないのだけれど、それでも、それぞれに1部屋与えられているこの状況は4人兄弟の子としては恵まれていると言えるかもしれない。

僕の母は4年ほど前から名前の分からない神経系の病気のため、生活が困難な身である。母が歩く姿は生まれたての子ジカを想像してみてもらえば様子が分かるのではないだろうか。パーキンソン病患者に現れるいわゆる『振戦』という症状に見えるが、医師の診断によればパーキンソン病ではないと言う。また握力は赤ちゃん並みであり鼻をかむのにも苦労をしているが、幸か不幸か、頭はしっかりとしており口うるさく僕の成績に文句をつけてくる始末である。兄弟で協力して買い物や犬の散歩などをしており、母は病気の身体ながら、家から出られないまでも洗濯や家事に精を出している。

僕の父は世間的には外科医としてそこそこ偉い地位にいるらしいが、我が国の多くの家庭と同じく僕の家庭でも父一人に対して、母プラス子4人という2極対立の構造ができあがっている。父は昔から商才がないのにマネーゲームに首をつっこみたがる傾向があるらしく、学生時代に当時世間にあまりなかったコピー機を大金をはたいて購入し、それを外のコピー機よりも少し安い値段で友人たちに使わせて利益を得ようとして赤字を出し祖父母に借金するという可愛らしいエピソードから、結婚後、母の反対を押し切ってバブルの波に乗りトマムのゴルフ場そばのホテル建設のための株を大量に購入し、バブル崩壊の被害をそのまんま被って何千万もの借金を負うという笑えないエピソードまで持っている。だが関白亭主なので誰にも父の暴走を止めることはできない。彼がのちにデボラ家に悲劇をもたらすのであった。












たぶん続きます。
あんまり期待されるとアレなのであらかじめ言っておきますが、『いわゆるミステリ』ではないです。
おそらく3章。














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