お帰りバイバイ
去年の今頃、卒業以来連絡をとっていなかった高校の友達から突然連絡が来た。
『PCにメール送りたいからアドレス教えてくれないか』
用件を求めた僕に、『電話では伝えられないからさ』と、仕事の依頼でも無さそうだからとそのまま
仕事終わりにしこたま飲んで、終点の高尾まで乗り過ごして一夜の宿にと漫喫に入って何気なくPCでメールを確認した。
『久しぶりで、こんなに悲しいお知らせはしたくないんだけど、送ります。鉱泉の仲間、山田達郎は、マッキンリーにて永眠されました。ご冥福をお祈りいたします。』
高三の夏、僕は友達と八ヶ岳の赤岳の山小屋で1ヶ月の住み込みバイトをした。
山の夜は早く9時には完全就寝、3、4時には起きだし客の朝食の支度を始める。
いくら疲れているからといってもまだ寝る前にひと暴れするだけの体力は充分あった、
裸電球がぶら下がったタコ部屋でプロレスしたり音楽を聞いたりした後に、誰かが持ってきた酒をチビチビやって女の話をするのが楽しみだった。
その頃にはだいたい、デカイ蛾がブンブン飛んできてコップの飲めないでいる酒の中に飛び込んで鱗粉を浮かばせていた。
そこにいた一歳上の達郎くんは高校を中退して色々な山に挑戦しているんだと話していた、
ツイストパーマでHipHopが大好きで、普通にそこら辺にいる若者と大差なくむしろチャラいなぁと思っていた。
だから、そんな理由で高校を中退して後悔しないのだろうかと疑問だった。
本人にもそんな事を聞いた事がある。
『高校に行ってなれ合いでダラダラだべってるなら、俺は山に独りで登ってる方がカッコイイと思う』
とても気さくで人当たりも良くて、学校生活で困る事なんて多分なかっただろうと思うのに。
やりたい事があり過ぎて、ただ早く飛び出したかったのかな憂うくらいならポーンと。
メールを期に気鋭の登山家になっていた達郎くんの軌跡を知らない人のブログやら、どこかの掲示板で漁った。
そういえばカナダに行ってきますって年賀状に書いていたのを思い出したりした。
そのあと僕はその山小屋にも行ってないし、山登りもしていない。何度か年賀状をやりとりしたけれど、達郎くんとも会っていない。1ヶ月の兄貴分。だから去年、彼の死を知ってどうのこうのした訳じゃないし、ただ淡々と一年が過ぎただけで。
山から下りて程なく僕はツイストパーマをかけた。若気の至りだったとは思うが『ツイストかっこいいぜ』の言葉に影響されたのは確かだった。大学に入っても2、3回かけ直して夏前にのび過ぎて坊主にした。
今日、仕事の帰りに大学の先輩と飲んでいた、その人も山が好きで独りで登って写真を撮っている。
『今日J-waveでさ、マッキンリーで行方不明の日本人が見つかったってさ、マナブ前に知り合いが~とか言ってたよね?』
『ヤマダ?って名前?』
『そうっそう!!ヤマダだった!』
家に帰ってYahooニュースを確認してから、去年もらったメールを見返した。
日付が一年前の今日だったよ、よっち。去年メールくれてありがとう。
達郎くんお帰りバイバイ。




