いつのまにか増えてる…



👱🏻‍♀️”みなさんの中には、薬箱がまるで薬局、というより、まるで博物館のようだという方がいるかもしれません。


そうならないように、私は少なくとも年に一度、春の大掃除の際に在庫の確認をするようにしています。どんな物が出てくるかは予想もつきません。あの忌まわしい冬にお世話になった鼻炎薬の半分空になったボトルだったり、とっくに捨てなくてはいけないのに「念のため」といって引き出しの奥にしまい込んだまま、何年も暗闇の中で眠っていた処方薬だったりするかもしれません。


その時の常識では理にかなっていた薬でも、今となっては服用し続ける価値のない薬が出てくるかもしれません。医療ガイドラインは毎年(場合によっては、いつの間にか)進化しているため、私たちの薬箱は必ずしも最新の状態になっているとは限らないのです。


科学的に効果がないと証明された薬、あるいは有害なことが判明した薬を今でも多くの人が忠実に飲み続けていることに、私はいつも驚かされます。今回ご紹介する5つの薬がお手元にあれば、改めて検討し直し、医師に相談し、場合によっては処分してください。


心臓病の一次予防としてのアスピリンも、何十年もの間、心臓を守りたいと考える50歳以上の人びとにとって、低用量アスピリンを毎日服用することは「して当然」の習慣となっていました。(用量が非常に少ないため、「ベビーアスピリン」と呼ばれることもあります。確かに81mg程度と低用量ではありますが、子どもにとって安全ではないため、その呼び方もやめた方が良いでしょう。)


医師がアスピリンの服用を推奨したのは、アスピリンには心臓発作の一因となる血液の凝固を抑制する働きがあるためです。しかし2022年、米国予防医療専門委員会はガイドラインを改訂し、心臓発作や脳卒中の治療を受けたことのない60歳以上の成人が、心血管疾患の一次予防としてアスピリンの服用を開始することは推奨しないと発表しました。2023年の米国老年医学会のビアーズ基準(高齢者にとって不適切な可能性のある薬剤のゴールドスタンダードリスト)はさらに踏み込み、アスピリンを「服用開始を避けるべき」という明確な区分に変更しました。


それはなぜでしょうか?心臓発作や脳卒中を起こしたことのない人にとっては、アスピリンによる消化管出血を含む出血リスクが、心血管系に対するメリットを上回ることがデータで明らかになったからです。


ただし、重要な注意点として、すでに心臓発作や脳卒中を起こしたことがある人にとって、アスピリンは二次予防に役立つ可能性があります。つまり、将来起きるかもしれない問題を予防するのに役立つ可能性を持っているのですが、それは今回とはまた別の話です。


このことは、心臓発作や脳卒中のリスクが高いものの、まだ発症していない40歳から59歳の成人についても同様です。これらの区分については、医師と相談のうえ、個別に判断する必要があります。しかし、心血管疾患の既往歴があったり、リスクが高かったりするわけでもないのに、何年も低用量アスピリンを飲み続けている高齢者をよく見かけます。飲み続けている一番の理由は、誰もなぜ飲み続けるべきなのか、飲むことが理にかなっているのかといった点について検討しなかったからです。


多くの風邪薬に含まれる「鼻づまり解消成分」フェニレフリンは、市販されている人気の鼻づまり解消薬の多くで使用されている有効成分です。しかし、2023年9月、食品医薬品局の諮問委員会は、データに基づいた結果、フェニレフリンはプラセボよりも効果がないという結論を全会一致で下しました。フェニレフリンは、血流に到達する前に腸で完全に吸収されてしまうため、鼻腔に到達する量はごくわずかであることが判明しているのです。


実際に効果のあるプソイドエフェドリンが、2006年にメタンフェタミン製造への悪用を防ぐため、薬局の店頭からカウンター裏に移されると、フェニレフリンが主流になりました。製薬会社はフェニレフリンを配合して製品を作り替えましたが、それ以来、私たちはプラセボにお金を払っているのです。


ですから、本当に効く製品が欲しいなら、プソイドエフェドリンは今でも簡単に手に入ります。薬局で頼んで、身分証明書を見せればいいだけです。それでは、薬箱にある純粋なフェニレフリンのボトルはどうしたらよいのでしょうか?ご自身のためにも、捨ててしまいましょう。


単独で使用する便軟化剤も、アメリカで発売されている便を柔らかくする薬「コレース」は効きません。より正確に言うと、単独の便軟化剤として使用した場合、プラセボと比べて有意に優れているとは言えません。そのエビデンスは、何年も前からかなりはっきり出ています。


1950年代にまで遡る無作為化比較試験でも、ドキュセートナトリウムは便秘に対し、プラセボよりも統計的に有意な効果を示さないことが判明しています。こうした試験の中でも特に厳密なものの1つである、2013年の無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、便秘に悩まされることが多いホスピス患者を対象に、ドキュセートとセンナを投与するグループと、プラセボとセンナを投与するグループに無作為に割り振りました。研究者たちは、排便の頻度、量、硬さ、さらに、排便の完了度に対する患者の認識においても、両グループ間に差が見られないことを発見しています。両グループともセンナを投与されていたため、この試験はドキュセートの効果だけを分離して評価できる十分な設計となっており、その効果は実質的にゼロでした。


便秘でお悩みの方は、サイリウムなどの市販で購入できる、より効果的な選択肢について医師にご相談ください。


高齢者の睡眠障害やアレルギーに対する抗ヒスタミン剤も、アメリカで市販されている抗ヒスタミン薬「ベナドリル」の有効成分であるジフェンヒドラミンは、昔から使われているもので値段も安いため、無害な薬のように思われています。実際には無害どころか、特に高齢者にとっては危険な薬です。2023年のビアーズ基準では、ジフェンヒドラミンは高齢者への使用を「強く」避けるべき薬に区分しています。その理由として、錯乱、眠気、口の渇き、便秘、尿閉、転倒リスクの増加といった強力な副作用が挙げられています。高齢者は若年者に比べ、体内からウイルスを排出する速度がはるかに遅いために、ウイルスが体内に長く留まり、より深刻な影響を及ぼします。


これは、特定の抗うつ剤、膀胱薬、胃薬など、抗コリン作用を持つ他の一般的な薬をすでに服用している場合、特に注意して考えなければいけません。そこへジフェンヒドラミンが加わると、問題が一気に深刻化する可能性があります。


アレルギー治療においては、ロラタジンやフェキソフェナジンといった第二世代抗ヒスタミン薬のほうが、少なくとも同等の効果があり、さらに血液脳関門を通過しにくいため、眠気も出にくくなっています。


65歳以上で、睡眠目的などの理由でジフェンヒドラミンを使用している場合は、医師に相談することをお勧めします。


コデイン入りの咳どめシロップも、薬箱の奥にある、3年前の冬に呼吸器感染症で使ったコデイン入りの咳どめシロップのボトルには、2つの問題があります。まずは有効期限が切れています。次に、そのシロップは、おそらく思っているほどの効果がなかったはずです。


2014年のコクラン・レビューでは、過去に行われた2つの無作為化比較試験に基づき、コデインは一般的な風邪による咳を軽減する効果において、プラセボより優れているとは言えないことが判明しました。


そして、コデインが確実に引き起こすと言われている副作用は便秘と眠気で、まれに呼吸が抑えられることもあります。さらに、依存のリスクもあるため、飲み残したボトルを家族が手に取れるところに放置しておくべきではありません(米食品医薬品局が12歳未満の子どもへのコデインの使用を制限しているのには、正当な理由があります)。


患者さんに知っておいてほしいことは、エビデンスは変化するものです。それに合わせて薬箱の中身も変えていく必要があります。まずは、期限切れの薬から始めましょう。ほとんどの薬は、使用期限を過ぎると徐々にその効力を失っていきます。危険なアレルギー反応を起こした際に命を救うことができるエピペンなどの重要な薬は、新しいものを用意しておきましょう。未使用の医薬品を安全に廃棄する方法については、お住まいの自治体や保健医療局などでご確認ください。そして大切なポイントがあります。「トイレに流しても良い」と言われていない限り、薬はトイレに流さないでください。(ウォール・ストリート・ジャーナル誌)”