バーミヤンの友人達と肩を抱き合い、頬を寄せて別れの挨拶をした。

一泊とはいえ、名残惜しい別れだ。

「サファール ベヘイル(良い度を)。」と彼ら。


「ジュワンデヴスィ(ありがとう)。」と僕。


くるりと踵をかえすと彼らはバラバラの方向に歩いていった。

そっけないほどに切れ味のいい去り方。カッコいいぞお前ら。
昨日は僕の遺跡巡りに付き合ってくれたので、今日はたくさん働くのだろう。


僕も今日は大仕事だ。

昨日、来た道をまた帰るのが今日やること。定員大幅オーバーのランクルで舗装されていない荒れた道を7~8時間の移動。

こりゃ、尻が幾つあっても足りないな。

自分の尻より小さなスペースしか割り当てられないので、右で一時間、左で一時間、と片尻づつをシートに突き刺して到着まで耐えるのだった。

昨日、ここについたとき、すでにヒリついてた僕の尻が持つだろうか?


個人タクシー乗り場になっている交差点にある食堂でローティー(ほぼナン)と紅茶で朝食をとる。分厚く固いローティーが口の中の唾液を吸いきってしまい飲み込めない。胃に負担をかけまいとローティーを紅茶に浸してフニャフニャにして食べる。ホットドック早食いチャンピオンの食べ方だ。

食べながら、隣に座る男にカブール行きの車を教えてもらう。この男はローティーを紅茶に浸さずにもりもり食べている。喋る間も、噛み千切っては飲み込みすぐに次を噛み千切る。

???口の中はどうなってんだ???唾液ジャブジャブ出てんのかな?


手のひら三つ分もあるローティーを食べ終えて、カブール行きの車に歩み寄るがドライバーが見当たらない。車には<##峠****隊ギャルギャル団>と日本語のステッカーが張ってある。アフガンでは日本車、ドイツ車、ロシア車しか売れないそうだ。中でも日本車がダントツの一番人気!とても誇らしいことだと思う。


車を覗き込む僕を指差して、真っ直ぐこちらに歩いてくる長身の男がいる。その姿を見てひるむ僕。生まれついての肉食戦闘民族。高い鼻にぎょろりとした白く大きな眼。頭にまいた白いターバンが、頭の倍ほどに膨らんでいる。この人、ドライバーなの?兵士じゃないの?

「カブールか?」

そうだと答えると「お前が最後だ。出発するぞ。」と猛禽類の眼を持つ大男が言った。

こりゃ~車の中ではおとなしくしておいたほうが良さそうだ。

(独り言)

***前田日明氏、マット界に復帰。ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい。