タリバンの男達が帰った後、待っていたかのように次々と客が訪れ、珍しそうに僕の顔を眺めては、「ハザラみたいだな。」と言い、その度に僕を除く全員が爆笑した。

僕は・・・苦笑いである。

          


ここで、「ハザラ」の説明をしておきたい。

ここでいう「ハザラ」とはアフガニスタンに住むあまたの種族の一つ、「ハザラ族」のことである。

アフガニスタンの国土は東西をインドとイラン、南北をパキスタンと中央アジア、北東ではひっそりと中国に隣接している。


その文明の交差点アフガニスタンの中で、もっともモンゴル系の血を濃くその顔つきに残しているのがこの「ハザラ族」である。その深い目じりのシワがなければ、日本人と見分けがつかないくらいだ。


彼らは、その容貌からか、はたまた他の理由からか、この国では軽視されており、難民としてイラクに行けば、さらに酷い扱いを受けている。それでも彼らは他の種族、部族とどうにか共存し、生活している。アフガン中でよく見かける彼らに会って僕は、シルクロードに住む遠い親戚のような印象を受けた。


そのハザラ族の多くが、ここ、バーミヤン周辺や、更に西にある緑色の美しい湖、フォーラーティー周辺に住むという。



友人達は客と一緒にまだ笑っている。

大きな鷲鼻とパッチリ二重まぶたの客が両の目じりに指を二本ずつ添えて後方に引っ張り、パンスト被った強盗のような細目を作っているからだ。(世界中の細目を敵にまわす行為である。)


これはアジア(世界?)共通のギャグである。これに、からかうような口調で「ジャパ~ニ~」とねばっこい合いの手が入ると、僕は口汚くFワードを吐いてOFFしまうことがある。そうです。僕はこのギャグがよく似合う一重まぶたの細目だからだ。(悪くないよ。むしろいい感じ。ronflat談)


僕が苦笑いの口元をキープするのに疲れてきても、彼らはまだまだ笑っている。

そろそろだな。

ゆっくりと笑いの輪の中に入ると、「どうした?怒ったか?」と怪訝な顔になる友人と客達に向かって、顔を突き出し,目じりを引っ張って細目の細目を喰らわしてやった。

不意を突かれての更なる爆笑。

「ヒーーー!!」

二名が床に倒れて痙攣するようにヒクヒクと笑っている。

他の連中も肩で息をしてヨレヨレだ。


手段はどうあれ、アフガンの男達をヒーヒーいわしたったわ。と、一人満足した思いを胸に刻んだのだった。