「あの男たちはタリバンだよ。」

 

三人の男達がドアから出て行き、表の通りを歩いていくのを窓から眺めてから、ママディオノスが僕に向かって言った。

 

「えっ、タリバン、今この部屋にいた、あの人たちが?」

 

すぐに理解できずにポカンと面食らっている僕を見て、三人の友人たちは大きな声をあげて笑った。

 

ママディオノスが言うには、彼らの中の一人、僕が<大使館の職員>みたいだと感じていた男がバーミヤン近辺に駐留しているタリバンの一員であるとの事だった。


バーミヤンは小さな町(村?)なので、見かけない外国人がやってきたと言う事はその日のうちにタリバンの耳に入り、その日のうちに僕の所までやってきたのだった。僕がどのような人物であるか?を判断する為に。

 

そうとも知らずに僕は、「バーミヤン遺跡が見たくてはるばる日本からやってきました。いや~バーミヤン、大きい、大きい、最高、最高!」などと、とんちんかんな事をまくしたてていたのだ。

そういえば....

「タリバンヴィザは持っているのか?」
「カメラは持っているのか?」

など、タリバンが公に禁止を発表している事柄についてもそれとなく質問されていたなあ、と思い出しては血の気が引く思いがした。


タリバンヴィザ はペシャワールで取得していたし、カメラはママディオノスに隠すよう指示されていたので、持っていないと答えていたのだが、何か余計な事を言えばややこしい事になりかねないのだから。

 

ママディオノスは僕の隣で必死に言葉を補足して話をつなげていてくれたのだった。僕の言葉が拙い為に言葉の上での行き違いが無いように。

それを、何か必死だなあ、と他人事のようにノンキに聞いていた自分が情けなかった。

 

「ジュワンデヴシィ(ありがとう)。」

 

僕が心からそう言うと、友人たちは例の優しい笑顔で応えるのだった。