僕は、男ばかりの共同生活と聞くと散らかった部屋や、台所に積まれた汚れた食器、などを思い浮かべてしまう。


しかし、意外なほどにむさ苦しさを感じないのは、彼らが一様に明るく快活だからだろう。部屋もきれいに掃除、整理整頓されている。
(信仰の半分は清潔である。Byコーラン)


事あるごとに、「ジュワンデヴシイ(ありがとう)」と言う僕に向けられる彼らの笑顔は、母親に相対するときの安心感にも似た包容力を感じさせ、一人旅の中で、孤高ぶっていた僕は気恥ずかしくなり、うつむいてしまうことが何度かあった。


そのたびに彼らは、僕の手を力強く握り、大きくシェイクして「僕達はもう友達なんだ。何にも気にしなくていい。」そう言って、優しい笑顔で真っ直ぐに微笑みかけてくれるのだった。

 

剥き出しの土壁にもたれかかると、ひんやりとした感触が僕の中に溜まっていた火照りを涼しげな安心感と交換してくれる。


なるほど、環境に適した造りをしているのだな。


簡素な造りの建物ほど、そのことを感じさせるような気がする。

厳しい環境の中だからこそ、本質をついた、安らげる空間を造りあげているのだろう。

 

一休みしていると、ママディオノスが紅茶の入ったポットとグラスを持って来てくれた。タリバン、地雷、と神経的にも疲れていたのでサッパリとした紅茶の香りが心地いい。

 

皆でくつろいでお茶を飲んでいると、建物の外で数人の男が何やら大きな声で話しながら歩いているのが聞こえてきた。

 

「#$%&‘‘’&%%$$・・・・・」

 

かろうじて聞き取れたのは「日本人」という意味の単語。

 

続いて建物のドアがノックされる。
アジャーブがドア越しに応対していると、ママディオノスが僕にカメラを隠すように指示した。


程なく三人の男が部屋に通され、部屋の中で僕から一番遠い場所に腰を降ろし、こちらを見据えた。