静かな顔        

首都カブールを出てから、私に訪れた心境の変化は大きなものだった。タリバンがらみの数日を過ごしたので、相当のプレッシャーも感じていたのだろうと思う。

 

 

その重圧から解き放たれたせいか、カブールを出てからは結構大胆に動き回り、各地で出会う人の印象やその生活ぶり、その土地特有の雰囲気などに「さすが多民族国アフガニスタンや!。」といちいち感動していたものだ。良く言えば敏感に、言い方を変えれば少々バカになっていた。個人的には後者の表現が気に入っている。

 

 

今回はそんな時の象徴的な出来事のお話です。

 

 

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カブールを出て100キロほど北上した頃だろうか、風景が広漠とした砂漠地帯を抜けて、大地の所々に植物の茂るみずみずしいものに変化してきた。ヒンドゥークシュ山脈の山奥に向けて車は走る。

 

 

WDタクシーは最初の休憩地点である茶店脇の駐車場に乗り入れた。

黄土色をした土の道を挟んだ茶店の向かいには背の低い潅木が群生しており、景色の中に少しずつ増えてきた植物の緑色はこれまでに持っていた砂漠の国という印象が薄らいでいくのを感じていた。

 

 

茶店でトゥールチャイ(砂糖、カルダモン入りの緑茶)を飲んでいる時に、さっきからどうも目の見え方がおかしい。とはっきりと思うようになった。

視界の中に在る、人や家畜や植物がくっきりと風景の中に浮かび上がって目に見えているのだ。ある種の生命力を放っているようにも見える。

 

 

カブールを出て興奮しているのか?

極度に大気が乾燥しているからか?

確実に高度が増しており,空気が薄くなっているからか?

 

 

そうか、わかった!ここは信仰におおわれた国だからだ。

 

 

そんな突飛な考えすら湧いてくる。

私は畏敬の念と敬虔な気持ちをもって茶店から世界を眺めた。