そのときの旅行の目的はアフガニスタンを旅行してバーミヤン遺跡をこの眼で見ること。そしてペルシャと並ぶアフガニスタン絨毯を買って、日本で売り大もうけすること。

 売ったあとはスペインを旅行しようと勝手な皮算用までしていた私は根拠のない自信を胸に沖縄、タイ、インドとアフガニスタンに向かって進んでいた。

 アフガン情報とインド絨毯を調べたあとは10日間ほど北インドのヒマラヤの中腹にある村で過ごすことにした。インドセレブの避暑地である。

 沖縄でほとんど休みなく4ヶ月間働き、タイ、インドとあわただしく移動してきたし、パキスタンに入国すると、とたんに娯楽がなくなるのは前回の旅行でしっていたし、と考えられる理由を全て挙げてデリーからバスで北に18時間の小さな村にやってきた。

 この村にある寺院の中に山から湧き出た温泉が引いてあり、誰でも出入り自由。厳かな場所ながら気軽に天然温泉が楽しめるのだ。月夜の晩に1人湯に浸かり口を開けて天を仰ぐ。このときばかりはアフガンのことも頭から溶け出ていった。

 この村を訪れた6月は気候もアウトドアに適しており、のんびり山を歩いたり、レイヴパーティーを訪れた。

50~300人のアットホームなパーティが多かったとおもう。人が多すぎないのが好き。

 ここのレイヴは、車もバイクも入れない山の中でやっているので徒歩(ほぼトレッキング)でその場所まで歩いていく。
 私は一度、片道3時間歩いてへとへと。(遠!!)

 遠い遠い会場にたどり着くとそこにはスピーカーが設置されており、DJブースにはブラックライトが怪しく光り、近くの木の根元ではインド人のおじさんとその息子らしい少年がケロシンストーヴでチャイをつくりビスケットと一緒に売っていた。暖かいチャイに感激。

 初夏とはいえヒマラヤの中腹は夜になると冷えるので踊って汗をかいたらチャイを飲んで暖をとっていました。実に旨かった。

 夜中にレイヴ会場に到着したので、周りの風景がどうなってるかしらなかったけど、夜が明けるに連れてパノラマの神々しいヒマラヤの山々が白んだ薄明かりの中に浮かび上がってきた。一秒ごとに表情を変える、夜明け直後のホワイトワールド。

 私がたまらず

 「最高ー!」

 と叫ぶと一緒に連れ立って会場にやってきたイギリス人も

 「サイコ!」

 と吼えた。

 結局、予定より幾日かオーバーしてこの村を後にした。反省は瞬時にこなし、満足してアフガニスタンを目指すのだ。