ハイバル峠でのカルチャーショックにポカンと口を開けてばかりはいられない。私とアレンは朝食もそこそこにタクシーに乗り込み、アフガニスタンの国境を越えることにした。二人とも緊張が高まっていたのだが、ここはまだ目的の国では無いのだ。

国境のアフガニスタン側オフィスには知った顔の外国人がいた。ぺシャワールのゲリラ側領事館でチラっと喋ったドイツ人のデッタフが変装もせず(しないといけないことは無いが、人ごみの中でやたらと目立つ!)に普段着のまま一人で入国手続きに向かおう歩いていたのだ。

砂と岩の乾いた大地の上を民族衣装の男達に混ざってチノパン、ポロシャツの男が行く。まるで、自宅からちょっとした用事で外に出てきた男のような、雰囲気の脱力系オヤジ、デッタフにアレンと私は早速声をかけた。

アレン 「ハロー。ヴィザ取れたんだね。」
デッタフ「そうなんだ。友達に頼んでなんとか取れたよ。」
アレン 「良かったね。ところで僕らは今日中にカブールに行くつもりなんだけど、もし同じ予定ならタクシーをシェアしないか?バスだと3日はかかると聞いたしね。」
デッタフ「幸運にも同じ予定だ。ご一緒しましょう。」

見たところ40代(50代?)の白髪の男デッタフが加わり私達のパーティーは三人になり、より心強くなった。我々は徒歩でオフィスに向かった。

広漠とした大地に砂まじりの風が吹く。小さく群生するブッシュの他に植物はなく、風景がこの付近はオアシスでは無い事を教えてくれる。

アレン、私、デッタフの三人は砂漠の国を感じていた。