『おい!この交差点を向こう側はもんじゃの聖地だぞ!心して歩けよ…いいか!』

その言葉の意味通り、もんじゃ焼きのお店だけがほぼ軒を連ね、
軽快なコテのカチャカチャという音と、香ばしい香りまでもが商店街を闊歩する聖人みたいで
聖域に足を踏み入れた気分が上がる。
月島でもんじゃ焼きを食べるのがデビューの私にはなおさらで、
小学生の頃、下校の道程がまるでゲームの盤上と化し、
友人とジャンケンをしながらチヨコレイトだの、
パイナツプルだのグリコだのと歩数を決めて歩いた記憶が蘇り、
ジャンケンをする相手もいないのにもんじゃ、もんじゃと3歩ずつリズムを刻んでいた。
グリコの歩数じゃちっとも前に進まないのともんじゃは同じだわと、滑稽な自分が可笑しい。
そんな風にうんと時間をかけて交差点から30メートルくらい歩いた商店街に、その店はあった。
私は馬がいななくようにヒヒ~ンと止まり、
くるっと右を向き厩舎に導かれるように蹄をカッポカッポと鳴らしながら店に入る。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』


ブルルと馬が鳴らすように、首をうなだれて興奮を抑えようとしたのに、
先の聖人が座るテーブルには、立ち昇る湯気とともにクツクツともんじゃが踊り、
もう今では文字も書かなくなった小さなあのコテで、
チリチリ焼いているのをみたらもうダメだった。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』

『焼き、入ります‼』と宣誓ののち、
焼き方の手順を説明しながら華麗にもんじゃを作り上げて行くその芸術的な作法にうっとりする。
横にずらしたせんべいと、もんじゃらしい味わいを存分にと、
5分程度で焼き上げてくれたもんじゃは鉄板の上で
お熱いうちにはふはふと早々に召し上がれと誘う。
そんなショータイムを2度見て2度味わって、
もんじゃ焼きの感想を語る時間を海鮮焼きと堪能し、締めはやっぱりやきそばでしょと、
スペシャルな1枚をそそるソースの香りとともに食す。

聖地で聖水を食む夜、月がとっても碧くて綺麗だったけれど、
私には立ち昇る湯気とともにクツクツと踊るもんじゃに見えたのは言うまでもない。


【月島もんじゃ わらしべ】
〒104-0052 東京都中央区月島1-20-5
アクセス
地下鉄有楽町線月島駅 7番出口 徒歩2分
都営大江戸線月島駅 8番出口 徒歩2分
TEL:050-5796-4015
営業時間
月~金 11:00~23:00
土・日 10:00~23:00
定休日 無休