今年も答志島の巨大牡蠣がやって来た。
このアメブロを通じて知り合えたムーさんのところで巨大化される牡蠣。
答志島の牡蠣は数年前から注目を浴びていて、その繊細な味わいで人気が高い。
これを食さずして私の春は始まらない。
それでもおまけが入った合計78個の牡蠣の殻を剥くと思うとひるむ。
その気持ちを奮い立たせるのは、泡との抜群の相性とともに味わう執念にも近い欲望でしかない。
軍手をはめて牡蠣ナイフを並べ、キッチンハサミを右手に牡蠣を左手にいざ挑む。

加熱用牡蠣の63個。
ひたすらキッチンに立ち、一心不乱というのは正にこの事と言わんだろう。
牡蠣剥きオイスターなら小一時間で済んでしまうのだろうけれど、私はその2.5倍かかる。
朝の8時から始めて終わったのは10時半を回っていた。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』-巨大牡蠣63個

牡蠣の襞までサワサワとキレイにして、私のうちにある一番大きなバッドに整列させる。
この時に大きさや剥きの加減などを見ながら、宴のレシピに合う牡蠣の選別をする。
頭の中は牡蠣で汚染されたようになって、指に吸い付く剥いたばかりの牡蠣を喰らいたくなる。
これは加熱用だと自分に言い聞かせ、早く次の作業に取り掛かからなければと
強迫観念めいた感情を味わう。

次の作業はオイル漬けだ。

$エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』-オイル漬け


フライパンに炒りつけて水分を飛ばし旨味を凝縮させ、ワインとオイスターソースでもっと旨味を足したら、
にんにくと鷹の爪の香りをつけたオリーブオイルの海に放つ。
出来上がったオイル漬けの瓶にその姿を晒す牡蠣は標本みたいだと思う。
牡蠣43個のオイル漬け。
芸がないと言われてもいい。
この保存食なくしては次の季節は迎えられない。

そして夜は宴。
生牡蠣を食し、カキフライを食し、ソテーを食す。
宴に集まる輩たちにうやうやしく巨大牡蠣を披露する。
目を見張るその表情が私のひるんだ気持ちを和らげ、悦に浸らせる。
もちろん好きなだけ泡も飲んじゃってと、ポンポン開ける。

     エッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』-カキフライエッセイスト料理家ROMAKOの『好きな人と好きなモノを好きな時に好きなだけ食べる』-牡蠣のソテー

誰もがみんなこの立派すぎる牡蠣に、会ったこともないムーさんの生き方が乗り移った牡蠣だと感嘆する。
エスカレーする宴、春のはじまり。