今日はとても寒い日
昨日と同じ時間の電車に乗って帰っていた 。
昨日と違うのは、ブーツを履いていることくらい 。
今日はとても寒い日 。
冬が近いことを、星のきらめきが告げている 。
電車を降りて乗り継ぐ時、
昨日も見た人を、今日も見た 。
その人は、わたしの記憶にはっきりと残っていたから、すぐわかった 。
マーメイドラインが綺麗な金のドレスに
黒く細身なジャケットを羽織った、
昨日と寸分違わぬ後ろ姿 。
大きく盛られた巻き髪が、スーツの海のなかで
ひときわ、目立っていたのだ 。
それに、今日はとても寒い日 。
薄手のドレスに黒のジャケットは細い身体を暖めるには心許ない 。
わたしは、彼女に話しかけた 。
寒くないですか 。
彼女は、イヤホンを外し、わたしの目をまっすぐ見てから、
つけまつげを揺らして言った 。
私、ずっと今のままでいたいの 。
季節が変わっても、歳を重ねても、
ずっとずっと、今のままでいたい 。
若さが永遠ではないことを、
まだ、知りたくないの 。
だから、寒くなんかないわ 。
若さは止められないんだもの 。
彼女はまた前を向いて、15センチのヒールを鳴らしながら
スーツの海をするりするりと泳いでいった 。
わたしは、昨日おろしたブーツの重みを感じながら
彼女の軽やかな髪の揺れ方を、ただ、眺めていた 。
今日は、とても寒い日 。
話しかけたところから妄想ですけど、
すごい偶然だったなあ 。
マーシャル電波 。
新しい子 。
maru

