私の祖父は、台湾生まれの台湾人。
若い頃に日本へ渡り、戦争の時は日本兵として徴集され、
日本人の祖母と結婚して、5人の子供を授かった。
祖母に先立たたれてから、十数年も子供が巣立った自宅で
一人きりで生活を送った。
永住権を得ても、最後まで帰化せず台湾人のままだったように、
日本人や日本の事は最後まで好きにはなれなくても、
日本の銭湯は気持ちがいいと、ずっと前からお気に入りで、
足が痛いと言いながらも、近所の銭湯へ通っていた。
一人暮らしの寂しさと、家族と暮らす煩わしさを比べつつ、
子供たちに迷惑をかけずに生活ができる自分を自慢にしていた。
毎年3月に台湾まで出かけて先祖代々の墓に参るのがお決まりで、
今年も行きたいと顔を合わす度にいつも聞かされた。
おじいちゃん、お待ちかねだったパスポートの更新も完了しました。
ご希望の会社で、飛行機のチケットも手配できます。
そんなに急いで逝かなくても、来月には3月だったんだよ。
偏屈で我儘で手のかかる、素直に会いに来てとも言えない、
ちっとも可愛くないおじいちゃん。
可愛い老人になったら死んじゃうだろうと思ってたけど、
手間のかかる老人のまま逝くんだね。
物忘れに悩んでいても、体調の変化に戸惑っていても、
百近い年齢で、あなたの日常はお見事でした。
頼まれていた通りに、おじいちゃんが建てた台湾のお墓へ
送って行ってあげるから、安心して眠っていて下さい。
2012.02.08. 九十五歳で逝った祖父へ捧ぐ