現在の腹囲基準(男性85センチ以上、女性90センチ以上)の科学的根拠を覆すもので、診断基準の見直しに影響しそうだ。
現在の診断基準は、腹囲に加え、血糖、脂質、血圧の3項目のうち二つ以上で異常があった場合、メタボと診断され、保健指導(積極的支援)の対象となる。しかし、他の先進国に比べ男性の腹囲基準は厳しすぎる、女性の基準は逆に甘いと、批判されていた。
研究班は、全国12か所の40-74歳の男女約3万1000人について、心筋梗塞、脳梗塞の発症と腹囲との関連を調べた。
その結果、腹囲が大きくなるほど、発症の危険性は増加したが、特定の腹囲を超えると危険性が急激に高まるという線引きは困難であることがわかった。
現在の腹囲基準は、学会などが集めた小規模の研究データをもとに、腹囲が基準を超えると、内臓脂肪が蓄積して、生活習慣病になりやすいという前提で設定された。
同研究班は昨年、腹囲が男性85センチ、女性80センチを超えると、血糖や脂質などの検査データの異常が急激に増えるということを明らかにしたが、今回の発症との関連では腹囲基準の妥当性は導きだせなかった。
国際的には、腹囲を必須とせず、総合的にメタボを診断するのが主流。米国では、腹囲(男性102センチ以上、女性88センチ以上)は中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、血糖値を含めた五つの診断基準の一項目に過ぎない。
ただ、今回の研究でも肥満の人ほど発症しやすい傾向は変わりない。現行の基準でメタボと診断された人は、そうでない人に比べて発症の危険性は男性で1・44倍、女性で1・53倍高かった。
門脇教授は「腹囲が大きくなるほど心臓病や脳卒中を起こす危険は男女とも高くなったが、基準値としてどの数値が明確なのかを示すことは難しかった。今回の研究結果をもとに今後、最適な腹囲の基準について議論をしていく必要がある」と話している。
2010年2月9日 提供:読売新聞