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 私ももう十数年この「ご近所路上観察ファイル」をやっているわけで,一応の創作活動というのを行なっていると,言わせてもらってもそれほどひどいバチはあたらんのではないかと思ったり願ったりする今日この頃なわけでした。

 まぁ,特に意識しなくてもたいがいの人は何かしらどこかしらで創作ということをやっているような気はしますけれども。それを意識して継続しようとか考え出すと,創作活動ということになるんではあるまいかという気がするんでした。

 そんなわけで,最初の物件。
「死亡事故発生
 見落とすな 歩行者・自転車
 落とせスピード 車の速度」
とのことなんでした。

 こういった標語とかスローガンというのも,やはり創作物でありますね。
 小学校の授業なんかで作らされたりしますけれども,一度採用されたりするとそれが病みつきになってしまったりするものなのかもしれないんでした。私はその類のもので採用されたりほめられたりしたことはありませんが。

 川柳とか,こういう短い文字列の中で表現を行なうというのは難しいものであります。どういったところで工夫をこらすか苦労するところだと思われますけれども,その工夫がうまくいったときにはうれしくなるであろうなぁと思われるんでした。

 で,上の作品を見るに,作者の工夫ポイントとしては,見「落とすな」と「落とせ」という逆の言葉を並べたあたりではないかという気がするでありますね。
「かたや『落とすな』,かたや『落とせ』。このまったく逆であるふたつの言葉のコントラスト。この美しさ。おお。自分の才能が…こわい」
と思ったかどうかはわかりませんけれども,まずその部分をひらめいたんではないかと思われるんでした。

 しかしそれほどの才能を持った作者であれば,最後の「スピード 車の速度」というのが同じ意味の繰り返しであるということは当然気づいているはずでありますね。
 リズム的には「スピード」で終わるわけにいかないので,そのあとに言葉をつなげないといけない。それでは,スピード以外に他に「落とす」ものが何かないか。…ということを必死に考えたけれども,結局出てこずに妥協してしまったのかもしれないんでした。

 産みの苦しみ,お察ししたいところであります。

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 こちらは,某神社に隣接したお宅の窓に貼られたハリガミであります。割と大きな神社で境内が公園のようになっているので,子どもも多く遊んでいるところのようなんでした。

 石を、なげないで
 ガラスが、こわれます
 てっぽうを、うたないで
 ビービーダンを、うたないで
 おねがい、します
 ガラスが、こわれます.

 ああ。これはもう一篇の詩でありますね。作者は意識せずとも,一級の作品・創作物のようであります。

「おねがい、します」をはじめとする読点の使い方,どうでありましょうか。
「てっぽうを、うたないで ビービーダンを,うたないで」という言い換え,どうでありましょうか。
「ガラスが、こわれます」の繰り返し,どうでありましょうか。

 まぁ余計なことは言わず,じっくりと鑑賞していただくのがよろしいかもしれないでありますね。

 これほど鑑賞にたえる文字のみのハリガミというのも,珍しいんでした。写真に撮ったあと,しばし眺めていたほどであります。
 子どもたちからすれば,「わ。なんだこのハリガミー。変なのー。BB弾うっちゃえうっちゃえー」というくらいにしか感じなかったりするかもしれませんが。

「落とすな」は新潟市中央区・稲荷町あたり。
「ガラスが」は三条市・八幡町あたり。