俺、大阪生まれ大阪育ちやねん。高校卒業して、大学受験で明治大学と立命館大学に受かった時は、正直ちょっと迷ったわ。でも結局、明治選んで上京したんや。地元の友達からは「江戸に行くなんて裏切り者や!」って言われてな。半分冗談やろけど、半分マジっぽい空気もあって、なんとも複雑な気持ちやったで。家康になった気分や。あいつはガチやったけど。
大学入ってからは、ラグビー部にガッツリハマったわ。汗と泥まみれで仲間と走り回る日々が楽しくて、そのおかげで精神力とチームワーク鍛えられたんかな、大学4年で大手コンサル会社から内定もらえたんや。さらに、大学時代から付き合ってた彼女と結婚も決まって、来年には子供も生まれる予定や。今はほんま幸せの絶頂って感じやねん。
せやけど、今住んでるマンションが問題や。家族が増えるし、さすがに手狭になってきたから引っ越し考えてるんやけど、東京のマンション価格の高さにビビってるわ。共働きでも、今のエリアで新しいマンション探すなんて、ちょっと手ぇ届かへんレベルやねん。
そんな時、ツイッターで「マンション買うなら再開発エリアが狙い目やで」ってポスト見て、小岩ってとこ調べてみることにしたんや。城東エリア言うたら、大学時代に錦糸町に住んでた友達が何人かおったから、雰囲気的には友達と住んでるとこからそんなに変わらんかなって思ってた。
気になったから、小岩に実際行って、現地の人に話聞いてみることにしたわ。30代くらいのサラリーマンのお兄さんとか、子供連れの30代くらいの女性に「再開発ってどう思います?」って軽く聞いてみたんや。みんな「街がキレイになって嬉しいわ」「これから便利になりそうやな」って感じで、好意的やったで。再開発進む小岩、確かに未来明るそうやなって思えてきたわ。
そしたら突然、後ろからバナナを右手に持った60手前くらいのおっさんが「何やってんねん!」って叫びながら、自転車降りてきたんや。
危ないやつやってすぐ察知したけど、ここで事を荒立てたらアカンなと思って、「お父さん、どうしたんですか?」って笑顔で聞いてみた。そしたらそのバナナおっさんが、「あいつらの雇われやないんか?」って聞いてきて、なんやそれ、全然意味わからんわって思うたわ。
正直に、嫁が妊娠してることとか、今住んでるエリアのマンションが高すぎて買えへんこと伝えたら、おっさん目を瞑って「ふむふむ」って頷いてたわ。そんでおっさんがバナナを振り回しながら下町の 素晴らしさを力説した後、突然、「下町の有名人言うたら寅さんと両津勘吉や。こいつらに共通点あるけど、なんかわかるか?」ってクイズ出してきたからビックリしたで。すぐ頭に血が上る中年おっさんか?…関わったら面倒そうなタイプやな〜って答えそうになったけど、さすがにグッとこらえたわ。
「人情…深いことですか?(男つらの代名詞みたいやし)さくらの結婚式で博のおとんと寅さんのやり取りは感動しました。(ええ話やで)」
って答えたら、おっさん「若いのによう知ってるな!」ってめっちゃ褒めてくれた。
「お前ええやつや。あいつらとはちゃうな」って言うてて、その目の先にはデベロッパーの看板あったわ。
さっきから言うてる”あいつら”ってデベロッパーのことやったんかと、妙に納得したんや。
おっさん曰く、でっかい商業マンションできてようさん小金持ちが来て、街並みが壊されるのに抵抗あるらしい。「どんな奴ら来るかわからんし、お兄さんみたいな人がいっぱい来るなら良いけどな…」って、バナナを片手に持ちながら不安そうに言うてたわ。
ちょっと時間をかけすぎた思ったらしく「最初は、高圧的で悪かったな」って謝ってくれたんや。
ほんま人は見かけによらんなって思った瞬間、右手に持ってたバナナを神業で一瞬で皮を向き一気に口に含んで、バナナの皮だけを地面に叩きつけたんや。
「滑ろ!滑ろ!」と大声で叫びながら、自転車乗って去っていったわ。
なんやねん。あのおっさん、リアルマリオかよ!めっちゃおもろいな!
※注:この類の方はお会いしたことはありますが、概ねフィクションてす。