訓練後も続く雨、
もはやあきらめにも似た覚悟が、
明日への足元を固めてゆく。
早朝過ぎる深夜に目が冴えてしまい、昼間にラオウから聞いていた操法要領の資料に目を通しなおす。
これまで何度も読み込み、慣れ親しんだと思っていた文章が、まだなにかを問いかけて来るような感覚にさいなまれる。
今回この訓練の中で見てきた操法がそれに違うことがないか、
いま一度思い返す。
さっきまで、聞こえていた雨足は止んだようだが、
深夜のこの時間であっても、時折通りすぎる車が弾く水音は変わることはない。
人は言った、
そこには魔物が棲むと。
数々の操法魂を喰らいつくしてきたグリーンラバーには、
地面の奥底から浮かびあがるようなまだら模様が集まり、無数の縞を作り出している。
降り続いた雨はその幾重をより鮮明にさせていることだろう。
あれからもう6年も経ったのか。
魔物が腹を空かすには十分な時間だったであろう。
そして餌食が来るのを口を開いて、
待っている。
気がつけば早朝に仕掛けたアラームの2分前になっている。
いつもより早いが愛犬の散歩につきあってやらねばなるまい。
玄関の扉を開くと、生ぬるい湿り気を帯びた空気が皮膚にまとわりつく。
歩を進めるにも重い質量を感じるほど密度の高い気体に空間が満たされている。
しかし、
厚い雲に覆われた空を見上げると、
日が昇る方向には僅かな隙間から薄明かりが見える。
勝利への執念は天候すら味方にするという。
嵐を呼ぶと例えられた操法が再び動き出すには、
最高のシチュエーションになったではないかと思えてきた。
不敵な笑みを浮かべている自分から、
愛犬は少し距離をおいて、
気味悪そうに私を見ていた。