私の名前は、ティアラ。
5歳の時に、この家にきたの。
それまでは福島の繁殖所で「繁殖犬」っていうのをやってたの。
被災して縮小することになって
東京のボランティアさんが毎月数匹ずつ引き出して
やっと私の順番が回ってきたのは約1年後。
最初の希望者さんにはキャンセルされたり、紆余曲折あって
愛知県のオウチに行くことになったの。
私は、預かりのお姉さんだけしか懐かない
怖がりの人見知りだったけど、その時はものすごく頑張ったの。
オウチについた時、家族みんなにジャンプして飛びついたのよ。
だから今でもパパは
「ティアラが飛びついてきてくれたのは初日だけだったね」
なんて言うけど
どうしてもどうしても家族が欲しかったんだもの。
だから
「私を家においてください」って
「私の家族になってください」って
ひとりひとりにお願いしたの。
あの時の必死な姿を思い出すと、ママは泣けてくるんですって。
男の人や子供に飛びついたのなんて生まれて初めてだったわ。
次の日からは、やっぱりパパも子供も怖くて、
ママ以外とは距離を置いてしまったけどね。
それから
この家には15歳の老キャバリアのロッキー兄さんがいて
いろいろ私に教えてくれたわ。
だからロッキー兄さんがいなくなった今でも
足が麻痺したロッキー兄さんのスピードに合わせてゆっくり歩く散歩のままだし
次女ちゃんが学校から帰ってきたときは「おかえり」と言いに行くし
家の前で遊んでいたら窓からずっと見守ってるわ。
兄さんみたいにね。
「ロッキーが乗り移ったみたい」とみんな笑うけど
兄さんの最後のお願いだから仕方ないじゃない?
ホントはもう子供たちは大きくなって
ロッキー兄さんが一生懸命守っていた小さな次女ちゃんではないんだけど
心配してた兄さんのかわりに私が家族を守らなきゃ。
だって新しく家族になったリアンはまだ若くて甘えん坊で
全く頼りにならないんだもの。
一日中、私にくっついて、顔を舐めたり耳を噛んだりするの。
おかげで私の耳の毛はいつもぐちゃぐちゃよ。
でも私、自分の産んだ赤ちゃんはすぐ取り上げられちゃったから
リアンが甘えてくるのが嬉しいの。
だから大好きなママのお膝も譲ってあげるし
私を枕にしても怒らないわ。
だって大事な弟で、大事な家族だもの。
時々、預かりっ子ってのが来ては卒業するけど
その子にもいつも言ってあげるの。
「本当の家族が出来て良かったね、それが一番の幸せよ」って。
私は今でも
男の人は怖くて近寄れないし
子供たちのドタバタした動きも好きじゃないわ。
でも、うちのパパと子供たちは特別なの。
だから幸せ。
大好きな自分の家族と誕生日がお祝いできて。
4月12日
10歳おめでとう ティアラ
これからも仲良く楽しく過ごそうね