夢愛
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第1章~引越し~

智樹は知らされるまで全く気づかなかった。


知らされたのは仲良し6人組の幼馴染の佳織からで、つい2週間前のことだった。


今になって分かったことだが、みんなと違い少し人付き合いが苦手だったのだ。


そうでなければ、もっと早くみんなの様子がおかしいことに気づいていたはずだ。


小学校のころは2組に3人(悟・彩乃・竜斗)4組に3人(智樹・佳織・そして、結衣)と上手く分かれていたのだが、中学校に入ってからほとんどバラバラになってしまった。


そのせいか、あまりそのメンバーで集まったり遊んだりしなくなったような気がする。


しかし、今でも仲がいいことには変わらない。


「智樹・・・ちょっといい?」


階段を上っているとき、不意に後ろからか細い声で聞いてきた。


佳織だ。


「何?」


「あのね、結衣が今学期が終わったら引越しするって知ってたよね?」


智樹にはその言葉が信じられなかった。


「えっ?ホントに?」


「うん。まだ知らなかったんだ。アンタ、ホント鈍いね。」


と言いながら、制服にある唯一のポケットに手をまわして小さな広告のようなものを取り出した。


そこにはきれいな家の写真の下に「オープンハウス」と書かれていた。


「そこに引っ越すんだって。」


智樹はまだ信じられない。


何故引っ越さなければならないのだろう?


親の事情だかなんだかあるんだろうが何故結衣まで・・・。


祖母の家も近くにあるのだからそこに残ることは出来ないのだろうか?


そんな考えていると、


「キーンコーンカーンコーン♪」


と授業開始のチャイムが鳴った。


広告を左手に握り締め、一段飛ばしに階段を駆け上がった。





遠くまで

夏の夜。


蛍を見に小川へ走る。


青い月に照らされながら冷えた汗を拭う。


上にも星はあるのだが、真新しい光を見つけた。


それは一定の心地よい点滅であって、手の中にすっぽりと収まる大きさの蛍だった。


智樹たちは夢中でその光を捕まえる。これが最後の6人での夏だということも知らずに...。