日没会議
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脱走

すいません。こっちでお願いします。


日没会議

漫画喫茶 〜壁の向こう側に〜

今日漫画喫茶行ったんですよ、漫画喫茶。

漫画喫茶とは名ばかりで漫画の置いてあるスペースは店の半分以下の以下の以下。(8分の1ぐらい?)
ほとんどがパソコンの置いてある個室となってまして、まぁ別にそこをどうこう言うわけじゃないんですよ。漫画が読みたかったわけじゃないですしね。



でまぁ料金を払い、個室に入ったワケでして「こっから中はオレの陣地ね!入ってきたら死ぬから!」と心のなかで幼き日の自分に帰り満喫を満喫しようとしてたわけです。(ダジャレのセンスが光る!)




さて、レポートの調べ物でもするかとカバンを開けようとすると



「…はっ…!う…」





!?
耳に入り即判断しました。
誰か…
誰かがこの店の中でオナニーしてやがる!!

と。

しかもそいつぁ男です。男。
はっ!うっ じゃねぇよ気持ち悪ーな!
オナニーじゃねぇ!男のそれは「シコる」だ!オナニーなんて崇高な呼び方は眩しすぎる!
こいつぁゲロ以下のニオイがぷんぷんするぜッ!悪・即・斬!


「ぅ……あぁ……!はっ!はっ!」


おいなに絶頂に向かう階段を順調に上ってんだよ!エスカレートしてんじゃねーよ!


「はっ…!はっ…!」


息遣いも荒くなってきてんよ!キメェ!キメェよ!きんもーっ☆


「ぅ…ぅぉぉ」


「ぅぉぉ」?!ついに「お」まで来たか!!
周りが見えないことをいいことにコイツ……

最 後 ま で や る 気 だ



誰かー!!誰か来てくださーい!ここに変態がいまーす!!変態ですよみなさーん!!変態ですー!誰かー!!助けてー!!



「ぐっ…!」



!!!!




「はぁ…はぁ……よし」



「よし」じゃねーよテメー!一発抜いてスッキリしてんじゃねーよ!これからレポートやろうっつー人間がいんのに何考えてんだ!




女「気持ち良かった?」
男「うん、ありがと!」






チュッ☆
(口唇が重なり離れる音)





隣は二人用ブース席でした。死にたい。

向かいの女性

首の痛みで目を覚ますとむかい側にきれいな女性が座っていた。



ここは…?


周りを見渡すとここが電車の中であることがわかった。

そうか、今は帰りの途中だ。


ぼんやりとした意識のまま、なんとなく向かいの女性に目をやった。
栗色に染まった髪はよく手入れが行き届いていて、先の方はゆるやかなカーブを描いている。


いくつぐらいだろう?

その人は小さな本を読み耽っていて、伏し目の睫毛がとても長くて知的な印象を受けた。
たまにページをめくるために右手が動く。しなやかな指、きれいな爪。


おそらく同じ年代だろうか。もしくは少し年上かな。



時が経つのも忘れ、その女性に見とれていた。



「まもなく終点…」

機械的な女性のアナウンス。
はたと我に返る。
だいぶ先の駅まで乗り過ごしてしまったようだ。


まぁいいか、バイトまではまだ時間もある。
ゆっくり帰ればいい。
なにより、こんなに素敵な女性が見れたのだ、駅を乗り過ごすなどなんのことはない。



「ご乗車ありがとうございました。次は終点…」

車掌の鼻声のアナウンスが入り、向かいの子も顔をようやく上げた。


目が合った。

人と目が合うとついそらしてしまう。悪い癖だ。


なんとなく気まずくなったので、その女性が視界に入らないように出口のドアの前に立った。


空気の抜ける音と共に勢い良くドアが開く。

足早に電車を降り、そのまま階段を下って反対のホームを目指した。

「次は14分か」


まだ時間に余裕があることを確認し、用を足しにトイレへ向かって踵を返した。


薄暗い道だ。
なぜトイレに行くのにこんなに暗い道を通らねばならないんだ。
この駅は以前用事があって一度だけ降りて、その時もたしかトイレに行った。

暗いし人通りもなくて嫌な感じがしたのを覚えている。



「あのすいません」


びくりと肩が上がった。

呼び掛けられたと思い、振り返るとさっきまで向かいに座っていたあのきれいな女性がいた。

辺りは暗いがよくわかる。


「あのすいません、ちょっとお時間よろしいですか…?」



胸が高鳴るのを感じた。
なぜこんなきれいな女性が僕に話し掛けてくるのだろう?
さっきまで見ていた気まずさと、突然に話し掛けられた驚きと、きれいな女性を目の前にした緊張で冷や汗をかいていた。


「ぁハィ?!」

完全に声がうわずっている。
第一印象としては最悪だな。妙なところが冷静だった。


「すみません、お忙しいところを…あの…」



いやいや、まだ何も、返事しかしてませんが!?
まぁいい、時間なら心配いらない。


少し落ち着きを取り戻し返事をした。
「なんでしょうか?」


「す、すみません…!先程電車の中で向かい側に座ってましたよね…?」



「あ、はい!すいません、何か不愉快な気持ちにさせ…」


しまった。
これではやましい気持ちを持って見ていたと言っているようなものではないか。

「不愉快?」

「あぁいや!なんでもありません!」



女性は不思議そうにしていたが話を続けた。


「あの、私のことじっと見てましたよね?」



!!
気付かれていた…!


「すす、すいません…!」



待てよ?
僕は見ていただけじゃないか。何も痴漢行為に及んだわけではない。
何を謝っているんだ。そっちの方がよっぽど不審ではないか。





「いえ!とんでもないです!むしろ見ていただいてありがとうございます!」



は?


見ていただいて?

なぜ?


「ちょうどお腹が空いていたもので…ありがとうございます」








お腹…?

女性はゆっくりと僕に近づいてきた。




なぜだかわからない。
背中がぞくぞくと波打っている。


第六感というやつだろうか?

それが働いたのか僕はあとずさりをしていた。


「すみません、突然」


女性は近付きながらおもむろにコートを脱いだ。
その下には何もつけていない。


普段の日常ならこんなきれいな女性が目の前で一糸纏わぬ姿になれば男として取る行動はおそらく限定されるのであろう。いや、それ自体が非日常だ。
さしずめ今の状況は非日常の中の非日常とでも言うべきか。
やけに頭が冷静だ。


しかし次の瞬間、冷静さは風に吹かれた砂のように消えた。



女性の口は両耳にまで達し、真っ赤な唇の奥から舌のような細い突起が数十本と所狭しと蠢いている。

目は本来の色が反転し、黒地に白く小さな丸が描かれていて、それはしっかりと僕を見据えている。

空気が断続的にもれる音がする。
笑っているつもりか?

少し前まで本のページをめくっていたしなやかな指はしなやかとは言えないほど長く伸び、数も増えている。


からからから

わかるだろうか?空のペットボトルに小石を入れて振ったような音だ。
その女性だったものの、おそらくは喉であろう箇所から聞こえてくる。
肥大して赤く腫れ上がったそれを喉と言えるのかは疑問だが。



長い触手のような指が僕の首に巻き付き、そのままぐいと引き寄せられた。


からからからから


からからから


裂けた口から出た突起が僕の口の中に入ってきた。




からからから




断続的な空気の漏れる音。








からからから




からから








から


から


















その後何が起きたかはわからない。
気付くと僕は病院のベッドの上だった。


今こうして生きているのが不思議な気がする。



あれは何だったのだろう?


わからない。


だが僕は、もう二度と綺麗な女性に目をやることがなくなった。
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