山と音楽と酒の備忘録

山と音楽と酒の備忘録

経験や記憶の共有ができない一人旅の記録を主に書いています。

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(4日目)

 翌日は調子も天気も良かったので、面白山に登ることに決めた。朝食後、かみのやま温泉駅に行き、奥羽本線、仙山線と乗り継ぎ、面白山高原駅で降りる。この山は駅から登れるが、概ね3つのコースがある。この日は非常に暑かったので、時間はかかるが沢沿いのコースを選んだ。下りは、山頂に着いた時間によって、稜線通しの西尾根コースか、若しくは最短のカモシカコースのいずれかを選ぶこととした。

 ブナ林の中の沢沿いのコースは涼しく快適で正解だった。しかし長左ヱ門平を過ぎると大変見晴らしの利く稜線歩きとなり、花も多く楽しい道ではあるのだが、日差しを遮るものがなく予想通り暑い。そのうえ結構な急登で時間もかかるわ、狭い道の両脇に咲くアザミの棘も痛いわで、少々げんなりした頃、ハクサンシャクナゲやコケモモが現れた。山頂が近いと実感し、もう一踏ん張りしてようやく到達した。

 青空の山頂で、蔵王連峰や朝日連峰、近くにそびえ立つ大東岳などを眺めながら、行動食の力餅を幾つか食べたところで、列車の時間も気になり、休憩を早めに切り上げ、カモシカコースを下った。

 面白山高原駅に下山すると、予想以上に多くの登山客が列車を待っていた。私よりも早い時間に登り始めた人たちだろうか。外国人も二組いた。こんな山にわざわざ外国から登りに来ている物好きもいるのかと一瞬思ったが、恐らく仙台辺りに赴任している外国人だろう。神奈川から来た私こそ物好きだろうか。確かに仙台辺りからの休日の日帰り登山としては手軽ながらも登り甲斐もあり、しかも自然が多く良い山である。私も来て良かったと思った。

 この後は、仙台に行き新幹線で帰る訳だが、途中の作並温泉で登山の汗を流すこととする。事前に調べた、都の湯という源泉かけ流しの日帰り入浴施設に、作並駅から歩いて行く計画だ。ところが、駅の人やホテルの送迎バスの人に道を尋ねると、歩いて行くには結構な距離があり、また、電話をすれば施設の人が車で迎えに来てくれるとの話であった。日帰り入浴で、しかも私一人のために送迎をしてくれるのだろうか。半信半疑で電話をすると、すぐに向かうとの返事があった。こういうサービスがある所は珍しいのではないだろうか。

 しかし、しばらく待つものの、迎えの車は一向に来ない。温泉宿に向かう客や、ニッカの工場見学からの帰りの客で賑わっていた小さな駅には、私一人が残された。もう一度電話をしてみようと思った矢先に、都の湯とボディーに書かれたワゴン車が来た。文句を言おうかとも思ったが、日帰りの私一人のためにわざわざ来てくれたこともある。言わずにいようとしたところ、遅くなった理由がすぐに分かった。温泉街から駅に至る道、即ち山形から仙台方向への国道が渋滞しているのだ。これは帰りも大変だ。実は当初、帰路に関して仙山線に適当な時刻の列車が無いことと、入浴後に作並駅まで歩くのは面倒なことから、作並温泉のバス停から特急バスで仙台に行くことを考えていたのだ。このようではバスの大幅な遅れは必至だろう。仙山線で行くしかないが、指定席を確保している「はやぶさ」との仙台での乗り換え時間は10分少々しかない。今回は山登りが主体だったため、土産は最後に仙台でゆっくり買う予定だったが致し方あるまい。都の湯のフロントの人によれば、仙台から山形へサクランボ狩りに行った人たちの帰りの渋滞だという。そういえば今日は日曜日だ。送りの車の出発時刻を相談して決めてから、風呂場に向かった。

 作並温泉の泉質はクセが無く、いつまでも浸かっていられる感じだ。都の湯の客は殆どが地元の常連客だと思われ、楽天が勝ったよ、などと他の客に言いながら入って来る人もいて、仙台に来たのだなと実感する。時間の関係もあり利用しなかったが、岩盤浴もあり、常連客は何度も浴槽と岩盤とを往復している様子だ。

 送りの車から、仙台方面行きのバス停で待つ若い人が見えた。先ほど風呂場に入った時にすれ違った人で、様子から地元の人ではないなと思っていた。そして、バスの予定時刻からは既に30分以上が経過している。彼には気の毒だが、バスにしないで正解だった。

 仙台では、もう少し後の新幹線に乗るように変更しようとも思ったが、家に着くのが遅くなるし面倒だったので、予定の「はやぶさ」に乗ることとする。その前に、今日は昼メシを摂っていないので、酒とツマミの他にホームの売店で牛タン弁当を買うことにした。それ位の時間はあると思っていたが、私の前に並んでいた中華系の人が弁当を大量購入しており、しかも注文内容を途中で変えたりして時間がかかり、私が買い終えたのは列車が丁度入線してきた時だった。そういえば作並の駅にも中華系の人がいた。中華系の人は、本当に日本の色々な所に行くのだと改めて思った。

 新幹線に乗り込むと、満員で指定席のほうにも立席の客が入り込むほどだった。構わずに先ほどホームの売店で買ったカキの燻製で高畠の白ワインを飲む。仮に後続の列車に変更しても、指定席を取るのが結構難しかったかもしれない。それに好天の恩恵で、蔵王連峰、続いて吾妻連峰と、登った山々が夕暮れに映える眺めも味わえ、この列車のままで良かったと思った。大宮までの所要時間は1時間少々。赤ワインも飲み、牛タン弁当を食べ終えると、大宮駅に丁度到着した。(了)