有名になったある犬は
ご主人様の帰りを待ち続けた


毎日毎日、雨の日も雪の日も風の日も、待ち続けた


その犬は、本当にご主人様が大好きだった



ただ、「ただいま」って微笑む顔が見たくて

ただ、良い子だって頭を撫でて欲しくて

ただ、また一緒に隣に居て、抱きしめて欲しくて




誰よりも一番近くで、あの人のぬくもりを感じていたから




犬は、ただひたすらに信じて待ち続けた

[絶対に帰ってはこない]って解らなかったから

皆が口々に教えたけど、犬には解らなかったから

似てる人を見つけては、近寄ってみるけれど

やっぱり、あの人じゃなかったから



だから、ただ、信じて待つ事しか出来なくて

犬の悲しみも泣く声も、誰にも聞こえないから

犬には、[ほんの少しの希望]しか残ってなかったから

それを捨ててしまったら、犬は生きる意志を失うから



待って待って、待ち続けた

もう一度あなたに会いたくて

思い出が蘇るたびに、尻尾が少し揺れる

見えない首輪が、まだはまってる気がして




僕も信じてるから

あなたを待ち続けるから

僕は忠犬じゃないから

迎えには来ないって解ってるけど

またあなたと巡り会う事が出来たなら

哀れなこの駄犬に、ご褒美をください