つづき。
翌日の昼、K太郎のお昼寝に私もつきあってしまい、一緒に寝てしまった。
リビングで義兄も昼寝していたようだ。起きてK子を探すと、彼女は奥の部屋でギターを弾いていた。
そしてこんなことを言うんである。

「ロビンソン、ちょっと弾けるようになったよ」。
な、なんですってえええ~!?

「サボテンの花」は、5小節目(愛は~♪のところ)でBm7というコードが出てくるのだが、
これはバレーコードといって一本の指で弦を数本またいで押さえなくてはならないのでちょっと難しいのだ。
バレーコードの代表選手はFで、これがなかなかうまくいかないことから
「Fの壁」という言葉まであり、初心者はまずここで挫折することが多いという。
でも一曲マスターしようと思うなら、ひとつやふたつのバレーコードはクリアし
なくてはならない。

もちろんロビンソンにもバレーコードは出てくるのだが、とりあえずAメロにはない。
そして、私が一番歌いたいと焦がれているサビにも出てこないのである。
最初のほうで出現してしまう「サボテンの花」に比べて、たしかに練習は楽しい。
つまり、バレーコードのないAメロとサビが押さえられれば、
もう3分の2くらいは弾けるといっていいのだ。

「ぎゃ~! やってみてやってみて!!」とコーフンする私。
K子は弾いた。いや、弾き語った。ロビンソンを。譜面も見ずに。
すごい。すごいです。感動した。美しかったよ、K子!

私が息子と昼寝をしている間に、最終目標に到達してしまったK子。
所要時間、わずか90分。私の1ヶ月っていったい……。

「大丈夫、できるよ。サボテンの花より簡単かもよ」とK子は言う。
そうかな…そうかも…そうにちがいない……。
じゃあ、いきなりやっちゃうか? ロビンソン。
スピッツの楽譜を胸に抱え、手に汗にじむ昼下がりであった。