孫の優くんは、18畳の部屋を走り回る。
「ダメだよ!おとなしくしてね」と父親である義理の息子がさとす。
孫は5歳、誰も来ないのだもの・・・十分に大目にみてあげる事が出来る。
優くんは、いつもと違って落ち着いたグレー色の衣装で、ちびっこなのにネクタイもしてサ。
「優くん、今日はいつもと違って渋いお洋風だね~」
「うん、地味目な服がなかったから、昨日買いに行ってきたの」と、次女とその夫。
「そんなこと、気を使ってくれなくても良かったのに」・・・でも、嬉しいね。
「おかあさん、僕とこの子は明日は来なくて良いんですか?」と、義理の息子。
「うん、良いよ。明日は、朝一番に火葬の予約をしてるからね。朝ここで30分くらいの最後のお別れの時間を貰って、直ぐに火葬しちゃうから・・・・お経もないし、火葬し終わったら、現地解散だから。この時間だけでで十分だよ、優くんをよろしくね。」
18畳の部屋には、4人用の座敷テーブルとお茶のセットとポットも置いてある。
優くんは、リュックから折り紙を取り出して、
「一緒におろう、手裏剣」
「いいよ。 教えて」
・・・・・一生懸命に教えてくれるが、ちびっこの言う事は理解しがたいし、
どんどん先に進んでしまうので追いつかない。
「も~、ちゃんと見ててよ?!」
ちびっこでもイラつくんだと思った。
横から「怒りながら、教えちゃダメだよ」と、義理の息子の言葉に笑えた。
折った沢山の手裏剣を、母の柩の上に並べてくれた孫の優くん
母からはひ孫になる。。 お別れだね。
2歳までの優くんしか母は知らない。 ・・・ごめんね。
優くんが手裏剣を折るのを見て、私も折り鶴を折ってみたくなった。
皆が出払い、また私一人になった。
後で長女は、少し食べるものを持って来る事になっていたので、
折り紙を買ってくれるように頼んだ。
娘が持ってきてくれたのは、カップ麺であった。
母との最期の食事は・・・・・・・・カップ麺なのね。。。
娘と私、寝たい時に寝て、母との時間を過ごした。
私は、何羽も折り鶴をおったよ。しっかり羽も広げてあげた。
柩の上は、夕方に届いた柩の上に飾る花束と、
色とりどりの手裏剣と色とりどりの折り鶴。
そして、、、、娘が置いた缶ビールとつまみのポテトフライ。