僕、シム・チャンミン。
35歳。独身。公務員。
趣味はゲーム、筋トレ、料理。
加えて最近、ローカル線を使った一人旅にハマり始めた。
廃線も懸念されるような地方のローカル線は、だいたいいつも空いているし、青春18切符を使えば破格の安さで移動し続けられる。
観光地を巡ることにあまり興味のない僕には、車窓を眺めながら駅弁を食べる移動時間こそが旅の醍醐味だった。
確かに一日10時間以上座りっぱなしだから尻は痛い。
それさえ我慢すれば、途中降りたい駅があれば降りて、次来た電車に乗る、なんて気楽な一人旅は僕の性に合っていた。
鉄道のチケットを買うのは、もっぱら通勤乗り換え駅のみどりの窓口。
格安切符は窓口販売のみだし、車窓にこだわりたい列車の座席指定なんかはネットでは心許ない。
だけど、このみどりの窓口、ある意味くせ者なんだ。
「・・・青春18切符1枚お願いします」
「あっ、こ、こんにちは~。はい、青春18切符ですね~。」
毎回、この駅員さん・・・なんだよな・・・。
頼むから毎度「青春18切符」って繰り返さないでもらいたい。
そもそも、この切符のネーミング、マジで変えてもらいたい。
自意識過剰なんだってのは分かっているけど、まったく「青春」とかと縁のなかった僕にこの甘酸っぱい単語を言うハードルの高さは世のリア充には理解できまい。
ついでだけど、何歳でも使えるのに「18」という「18歳以下限定」とか誤解を生むような単語が入っているのもどうかと思う。
僕自身、それで誤解して今まで使わなかったわけだし・・・。
「お待たせしました~。114,000ウォンです。有効期限は3月1日から4月10日になりますのでお気をつけ下さい。ご、ご存知だと思いますが、お伝えするように言われているので~」
フニャッと笑いつつ言う最後の言葉が余計だ。
「あなた、いつも『青春18切符』を買ってますよね」的なのをいちいち前面に出す受け答えやめろ。
このみどりの窓口担当の駅員さん、名札によると「チョンさん」、は遠目から見てればかっこいいスパダリ的な雰囲気なのに、
「次お待ちの方どうぞ~」という舌足らずな話し方とか、
「えと、えっと、こんにちは・・・」となぜかいつも慌てた感じとか、
小動物的な上目遣いで毎回ウルウル見てくるところとか、
目を細めて猫みたいな笑顔で笑いかけてくるところとか
いろいろ、そう、いっろいろビジネスライクじゃなさすぎて、コミュ障気味な僕は毎回気が重い。
「必ずこの注意事項を読んで御利用くださいね、って、あ、これもお伝えしなきゃいけなくて~」
なんでそこでそんなに照れてるんだよ。
目元や首筋までほんのり赤くしちゃって。
目の前でなぜか恥じらっているこの人、チョンさんを見ていると、なんかこっちが気恥ずかしい気分になってくる。
そして、チョンさんは、発券が済むと毎回最後に必ず切符に同封の注意事項欄を指でなぞって示してくる。
ドキっ。
そう。
そうなのだ。
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