◉アメリカ弁護士が介在した契約の特色
何よりも契約はプランニング(計画・企画)の手段。大きく言うと人生のプランニング。
そのため未来への想像力が必要となる。契約は当事者の合意を確認するだけの確認書ではない。
当事者が今は考えていない点まで考え、将来のリスクを、当事者間で予め明確かつフェアに配分する道具。

いま予想されている範囲での互いの義務の履行(performance)をきちんと行うための取り決めだけでなく、将来起こるかもしれない事態(risk)についてもできる限り明確に定めて、将来の紛争を未然に予防しておく手段(risk planning)

アメリカの契約は明確さと詳細さが特色。
契約で定められている義務はその責任であり、それ以上の責任はない。
契約は責任を基礎づけるというより、明確に責任を限定する道具。

契約は当事者のもの。
『私的自治』個人と個人の間で結ばれる契約については,国家が干渉せず,それぞれの個人の意思を尊重するという原則
『契約の自由』当事者同士の自由な意思によって結ばれた契約は、法律に反しない限りその自由を尊重するという原則

日本では「訴訟は最終手段」との認識が強いが、アメリカではそうではない。
・アメリカ訴訟は手続き費用が高額ではない。
・訴訟を提起すれば情報開示を行うことができる。

・アメリカ法(英米法)は判例法主義。
→引用されるのは先例。具体的紛争の積み重ね。

・日本、ドイツ、フランスは成文法主義。
→引用されるのは法典。六法全書の中に法がある。条文の抽象的な文言から結論を出そうとする。

◉約因~consideration
英米法では、契約が有効に成立するには当事者の意思の合致(合意)だけでは足りず、約因が必要となる。
ドイツでも日本でも約因は不要。意志の合致で契約は成立するとされているから。
 
約因は「対価」とも訳されることがある。
「XがYのBという約束(または行為)を『考慮』してAを約束する」
「Bを『約因』としてAを約束する」

これからBをしてくれればAをするという場合だけを意味する。
将来の交換取引を内容とする約束と合意だけを、アメリカ法では「契約」として保護する。
※英米契約法では、贈与は契約と認められない。

◉契約を破る自由
「損害賠償責任だけは果たしたうえでの自由」
「問題はどうやって債務者に約束を守らせるかではなくて、どうしたら人々が契約関係に入るのを促進できるかである」

なぜアメリカ法は契約を破る自由を認めるのか。
→「自由」と「競争」の考え方に行き着く。両当事者は契約締結により一定の利益を見込むことができ、
それを踏まえてもなおさらに利益追求の行動をしてもよいというわけです。

競争によって実現されるのは、より効率的な社会であり、限られた資源の効率的利用。法はそれを邪魔せず、支えている。

アメリカ契約法はwin-win gameであり社会にとっても有益な契約がより多く結ばれるようにすることこそが重要であること、
言い換えれば、安心して契約を結べるような法制度こそ法の目的であるという。

その意味は「契約を結んだ場合に、往々にして人は後でそれを後悔することがある。
その時に、必ず契約を履行しなければならない、履行を強制されるというのでは、慎重にならざるを得ない。

そうではなく、相手方の履行利益だけ賠償すれば、それ以上の責任は免れると法が保証することにより、安心して気楽に契約を締結できる」ということ。
債務者の「自由」を保障することこそが、契約の促進となるという考え方。法の強制はそれを妨げるだけ。

契約を破る自由とは自由勝手ではない。相手方が契約によって期待していた履行利益を損害賠償として支払うことは、
まさに契約当事者の自己責任。しかし、それ以上に法が強制したり、契約違反を悪だとして非難したり、

気持ちを傷つけたとして慰謝料を払うというような必要は、アメリカ法上はありません。
それは金を払って契約関係から離脱する自由を認めていることになる。