中学校のとき、あいちゃんと呼ばれていたクラスメートがいた。
特別仲が良かったわけでは無いのだけど、私は何となくあいちゃんが好きだった。
勉強ができる(といわれている)うちの学校の中であいちゃんは、トップクラスにいたと思う。
色白で、細くて、黒髪のすこしくせっ毛の髪が印象的だった。
確か入学当初は帰宅部で、後にバスケットボール部に入っていた。
最初は固そうで近寄りがたい雰囲気だったのが、実は気さくで楽しい人だと分かったのは
2年生になってからだっただろうか。
あいちゃんと同じ班になったとき、理科室で(私の担任は理科の先生だった)
授業前あいちゃんが、「先生機嫌悪い」 とぼそっとつぶやいた。
先生は生徒がだらしなかったり、生徒の事で機嫌が悪いと生徒に正座をさせたり
生徒の悪行によっては履いてる健康サンダルで生徒の頭をバコーンと殴る人だったため、
私は恐れをなして教科書とノートを広げ、ついでに
筆記具も出して背筋を正して授業開始を待っていた。
まもなく授業開始の号令があり、やはり先生は
「教科書とノート開いてないやつ正座。」そう言った。
機嫌が悪い証拠だ。
私はそのとき隣りを見てはっとした。
あいちゃんが、教科書は開いていたのにノートを開いてなかったのだ。
彼女は、だまって私の隣で椅子を降りて床に正座した。
せっかくあいちゃんが先生の不機嫌を教えてくれて私は正座を免れたというのに。
私は何だかあいちゃんに申し訳なくなった。
そして、あいちゃんの方をしばらく見ることができなかった。
授業後、あいちゃんはいつものあいちゃんだった。
すごいな、と私は思った。
あいちゃんは中学校を卒業して市内のトップの高校の一番難しい科に進学した。
その後の消息は知らないが、きっとカッコイイ職についているに違いない。