その背中、最後まで誰も捉えられず
競馬には、華やかな「差し切り」もあれば、泥臭い「追い比べ」もあります。

しかし、ダイワスカーレットが選んだ道は、そのどれでもありませんでした。


「誰よりも早く前に出て、そのまま最後まで誰も寄せ付けない」。
12戦8勝、2着4回。

生涯一度も3着以下に沈んだことがないという、競走馬としての理想を体現したような完璧な戦績。彼女の前にいるのは、いつだって風とゴール板だけでした。

宿命のライバル:ウオッカとの「2センチ」の記憶
彼女を語る上で、ウオッカの存在は欠かせません。
同世代に生まれた二頭の天才少女。2008年の天皇賞(秋)は、日本競馬史に残る伝説の一戦となりました。

最後の直線、逃げるダイワスカーレットを、ウオッカが猛然と追い詰める。

二頭が並んだまま、火花を散らすような叩き合い。
並んでゴールを駆け抜けた瞬間、場内は静まり返りました。

13分間にも及ぶ、あまりにも長い写真判定。
結果は、わずか「2センチ」の差で2着。
しかし、あの日、府中のターフで見た彼女の「負けてなお強し」と言わしめる執念は、勝者以上の輝きを放っていました。

2008年有馬記念:実況が讃えた「女王の独壇場」
天皇賞での惜敗を経て挑んだ、2008年の有馬記念。

実況の青嶋達也アナウンサーの言葉が、彼女の圧倒的な強さを象徴していました。

「37年ぶりの夢が叶うか! ダイワスカーレットだ! ダイワスカーレットだ! 13分待たされたあの秋の屈辱を、中山の直線で晴らした!」

牝馬として37年ぶりとなる有馬記念制覇。
それも、最初から最後まで一度も先頭を譲らない「逃げ切り」という、最も勇気のいる戦法での完勝でした。彼女はこの日、名実ともに「現役最強」であることを証明し、伝説となったのです。

ミス・パーフェクトが遺した美学
ダイワスカーレットの強さは、その気性の激しさと、それをねじ伏せて走る「知性」にありました。
どんなに速いペースで逃げても、最後にはもう一度伸びる二の脚。

その姿は、可憐な名前とは裏腹に、まさに「鋼の女王」と呼ぶに相応しいものでした。

引退後も、彼女が記録した「連対率100%」という数字は、最強牝馬たちが次々と現れる現代においても、依然として破られない聖域として輝いています。

「前を走る者の孤独と、それを守り抜く強さ」
ダイワスカーレットという星が遺した輝きは、今も私たちの記憶の中で、色褪せることなく先頭を走り続けています。

Betta Baby Store