目が覚めると、胃の奥底の僅かなむかつき以外は見事にさっぱりとしていた。
昨晩はと言えば、たまたま入ったコスメショップの可愛らしいお姉さんに教えてもらった鉄板焼の店で出会った気さくなお姉様方と大いに盛り上がったのだ。
初めての土地と美味しいお酒と鉄板焼。
そして人情味溢れる地元の人々。
これは進むわ。グラスも、箸も。
木曜の夜だというのに、店内は仕事帰りのサラリーマン、久しぶりに再開した地元の仲間などで埋め尽くされていた。
目の前の鉄板の上に、白く湯気の立った生地が丸く薄く伸ばされていく。
繊細に積み上げられたキャベツの山。
小麦色の麺が蒸される。
海老やらイカやらの磯の香りがジュワッと広がる。
それらがそれぞれの場所で熟成され、1つに重なる。
その重なりがあまりにふんわりとして幸福そうだったのだヘラでペタっとひと押しされた瞬間は、あっ、と声を出してしまうほどだった。
広島に来たのだ。
旅行先で見ることのできる景色はほんの一部であり、出会って言葉を交わすひとも限られているが、たったそれだけで、なんとなくその土地の空気に触れた気分になってしまうのだ。
あちこちに赴く当初の予定を変更し、私達は2日かけて宮島を堪能することにした。
潮の満ち引き、昼の姿、夜の姿。
山の上から見下ろす瀬戸内海。
すぐ向こう岸の四国を見たときは、島国に生まれたことを嬉しく思った。
旅は続くのだ。
自分の目で確かめた景色を頭の中に貼り付けて生きていく。