草原でワニ が火に取り囲まれ、困っていた。


通りかかった人間が、ワニを助けて袋に入れて背に担ぎ、湖まで運んでやる。


袋からワニを出すと、ワニは人間に「腹が空いているからお前をこれから食べる」という。


人間はワニに、「助けてやったのだから、感謝して食べないでくれ」と頼む。


そこで、ワニは、湖に水を飲みに来たロバたちに意見をきく。


ロバたちは、我々は人間を助けて人の乗り物となったり荷物を運んだりしてやるが、感謝をされたことがないと言う。


日頃使役してきた動物たちに責められ、窮地に立った人間を、ただひとり、ウサギが助けてくれる。


知恵者のウサギが

「この袋はずいぶんと小さすぎる。人間は、本当にこの袋に入れてワニをここまで運んできたのか。ワニは、もう一度袋に入ってみてくれないか」

とワニを欺くのである。


そこで、再びワニが袋に入って見せると、ワニは人間に撲殺され、食用とされることになった。


ワニの入った袋を背負った人間が村に帰ると、子が病に伏せっていた。


助けるにはワニの血とウサギの肉が要る。


ちょうどワニはウサギの知恵をのおかげで袋に入れて持ちかえっている。


あとはウサギである。


助けてくれたウサギが、ほら、そこにいる…。



(「人とワニ」-Amadou Hampate Ba『Il n'y a pas de petite querelle』より)