新宿タワレコで発見した、聖飢魔IIの「MOVE」という大教典(アルバムの様なもの)の手書きポップ。中々辛口というか攻めた批評でした。
辛口なのは良いのですが、“聖飢魔IIがやる音楽である必然性が見出せない迷盤”という文には納得いかなかったので、私なりの異論反論オブジェクションを。
“聖飢魔IIがやる音楽である必然性が見出せない迷盤”。
私はこれはむしろ逆で、聖飢魔IIがやるからこそ重みが出た“名盤”だと私は思っています。
普段“殺せ!”などと歌っている悪魔達が、この大教典では前向きなメッセージの曲を演奏しています。しかしだからこそ、そこに意味だったり、この大教典ならではの面白味があるのです。
「見た目や表面的なイメージに惑わされず、自分の目と耳で確かめて物事の本質を見抜け」というのが聖飢魔IIが常々発していたメッセージだと私は思います。
そのメッセージが分かりやすい形で表出しているのが、1枚前の「NEWS」及びこの「MOVE」です。しかし悪魔だという事に気を取られていると、これらの大教典に込められたポジティブなメッセージは見落としてしまいます。まあ見落としてしまったら、それはそれで悪魔の思うツボなのかも知れませんが、あまりにも勿体無いじゃあありませんか。
また“聖飢魔IIがやる必然性”だけを追求したら、それこそ初期のダミアン浜田ワールドを延々と再生産し続ける事になると思います。
仮にそれをやったとして、そこに今の様な未来はあったでしょうか?
答えは否でしょう。
(勿論ダミアン浜田ワールドを否定するつもりは毛頭ありません。活動の発展性という意味に於いての話ですm(__)m)
ダミアン浜田ワールドから抜け出す事を恐れずに世界観を拡大していったからこそ聖飢魔IIの楽曲群は深淵さを獲得し、今でも老若男女問わず多くの人々を魅了しているのです。
そして「NEWS」や「MOVE」期の楽曲があるからこそ、初期のダミアン浜田ワールドも更に輝きを増しているのです。
デーモン閣下が今回の再集結ツアーで仰っていた様に、聖飢魔IIは前期と後期で“まるで違うバンドの様だ”。
おどろおどろしい初期の世界観。
前向きなメッセージで道を照らしてくれる後期の世界観。
この振り幅の広さがあるからこそ、聖飢魔IIの魅力は今でも全く色褪せないのだと思います。
“悪魔らしからぬ”後期を象徴する楽曲が多数収められた「MOVE」。
解散の前年にも関わらずのこの攻めた姿勢。ゴイスーです。
そしてこの大教典は聖飢魔IIの世界観を大きく広げた1枚であり、前期の曲にまで永遠の輝きを与える、時を超えた“名盤”なのです。完
補足
この文章は、件の手書きポップ及びそれを書いた方の批判の為の文章では決してありません。私はあのポップの批評も考え方の一つであると思いますし、私自身の考えを認識し直すヒントとなりました。本解散から16年も経ってからこの様な批評が出る事は、聖飢魔IIの偉大さを証明するものであり健全な事だと思います。