【問】生活保護の申請時に、水際作戦が行われた場合の対応策を教えてください。

 

 病気で働けず 生活に困っていますので、近いうちに生活保護の申請をするために、福祉事務所に行こうと考えています。

 しかし、 福祉事務所では、いろいろな理由を付けて、「生活保護の開始申請書」の書類を渡してくれないなどの「水際作戦」が行われているという話をよく聞きます。

 そこで、水際作戦が行われた場合の対応策を教えてください。

 

 

【答】

 「生活保護の水際作戦」とは、一般的に「地方自治体が生活保護のための財政負担を軽減する等の目的で、生活保護の申請をさせないように指導・助言を行うこと」を言います。 

 生活保護の水際作戦で有名な事件は、北九州市の「おにぎり食べたい」というメモを残して餓死された男性の事件です。 この事件は、生活保護受給者の方が就職したと、市職員に虚偽報告を強いられ、生活保護を廃止された結「おにぎり食べたい。」とメモに書き残して餓死されたものです。

 

 また、北九州市門司区で、2か月間で3名の餓死者が出た「門司餓死事件」があります。 この1件目は 市営団地で78歳の母と49歳の長女がともに餓死した事件で、2件目は 市営団地で二男から これ以上の支援を拒否された56歳の男性が餓死したもので、後者のケースでは、男性は生活保護の受給申請に2度 福祉事務所に行きましたが、北九州市は 二男へ頼るよう求めていた ということです。

 そこで、私は、自分の体験をもとに、水際作戦の対応策を書きたいと思います。

 

 生活保護の申請をするために福祉事務所に行っても、ケースワーカーが保護開始申請書の様式を渡さなかったり、申請書を受け取らなかったりしたときは、申請行為は、「非要式行為」といって、必ずしもその福祉事務所が定めた様式である必要はなく、普通の紙に、住所、氏名、生年月日、(電話番号)、生活保護の開始を申請することを記載し、役所に提出すればよいこととされています。

 それでも、福祉事務所が申請書を受理しないときは、書留郵便内容証明郵便で 福祉事務所へ 自分で普通の紙に書いた「保護開始申請書」を郵送し、後日、電話で福祉事務所に申請書が届いたことを確認すればよいだけです(このグログの12月10日の記事「生活保護の申請」をご覧ください。)

 

 北九州市や札幌市などでの餓死事件以降、「生活保護開始申請書の様式を渡さない」とか、「生活保護開始申請書を受理しない」とかいった、あからさまな行為は 少なくなりましたが、厚生労働省が 扶養照会を行う必要がない事例を、全国の自治体に通知したにもかかわらず、国の通知により扶養照会を行う必要のないとされている 親族への扶養照会が、相変わらず行われています。

 

 多くの生活保護の相談者・申請者の方は、親族からの扶養・援助を受けることが難しいから、生活保護の相談・申請に来られているわけですから、福祉事務所から扶養照会を行っても、扶養・援助できるという回答は、ほとんどありません。 親族からの扶養・援助を受けることができるならば、誰もわざわざ 生活保護の相談・申請には来ないでしょう。

 

 水際作戦が無くならない理由は、その福祉事務所の長年のやり方・伝統といったものにも原因があります。 新人のケースワーカーは、先輩ケースワーカーからの助言・指導を受けて業務を行いますので、先輩ケースワーカーの助言・指導が、正しいものとして受け取り、その助言・指導に沿った方法で。生活保護の相談者・申請者・受給者に接します。 しかし、往々にして、先輩ケースワーカーからの助言・指導の中には、誤ったものが多く含まれています。

 

 自分で生活保護手帳や 別冊問答集を読んで、根拠を明確にして、ケースワーク業務を行うケースワーカーは少なく(中には、生活保護手帳や 別冊問答集をほとんど読んでないケースワーカーもいます。)、自分では何も考えずに(その方が楽なため)、先輩ケースワーカーの言うとおりに 事務処理を行いがちです。 これは、自分で調べて正しいと思ったことを行っても、先輩ケースワーカーや 査察指導員(係長)から、「うちの福祉事務所では、そういったやり方はしてない。 一人だけが、そういったやり方をすると、生活保護受給者から、『あのケースワーカーは、ああいったやり方をしているが、なぜ私の担当のケースワーカーは、そうしないんだ。』という意見が出て、他のケースワーカーに迷惑をかけることになる。」などと言われ、横並びを強く求められることにも原因があります。

 先輩ケースワーカーや 査察指導員(係長)から、そのように言われると、経験の浅いケースワーカーは、それに反論することは難しいのです。

 このようにして、誤ったやり方は、いつまで経っても無くなりません。

 

 

 

(参考)

〇生活保護手帳

問(第9の1)

 生活保護の面接相談においては、保護の申請意思はいかなる場合にも確認しなくてはならないのか。

 

 相談者の保護の申請意思は、例えば、多額の預貯金を保有していることが確認されるなど生活保護に該当しないことが明らかな場合や、相談者が要保護者の知人であるなど保護の申請権を有していない場合等を除き 確認すべきものである。

 なお、保護に該当しないことが明らかな場合であっても、申請権を有する者から申請の意思が表明された場合には申請書を交付すること

 

 


問(第9の2)

 相談段階で扶養義務者の状況や援助の可能性について聴取することは申請権の侵害に当たるか。

 

 扶養義務者の状況や援助の可能性について聴取すること自体は申請権の侵害に当たるものではないが、「扶養義務者と相談してからではないと申請を受け付けない」などの対応は申請権の侵害に当たるおそれがある

 また、相談者に対して 扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行い、その結果、保護の申請を諦めさせるようなことがあれば、これも申請権の侵害にあたるおそれがあるので留意されたい。

 

 

 

〇生活保護手帳・別冊問答集

 ‥‥‥‥ 本人の申請権を侵害してはならないことはいうまでもなく、申請権が侵害されていると疑われるような行為も厳に慎むべきことに十分留意する必要がある。

 

 ‥‥‥‥ いかなる場合においても、本人から保護申請の意思が表明された場合には、速やかに申請書を交付するなどの対応が必要である

 

 

 

問9-1 口頭による保護の申請

(問)

 生活保護の申請を口頭で行うことは認められるか。

 

(答)

 生活保護の開始申請は、必ず定められた方法により行わなくてはならないというような要式行為ではなく、非要式行為であるとされている。 法第24 条第1項においては「保護の開始を申請する者は、‥‥(中略)‥‥ 申請書を保護の実施機関に提出して行わなければならない。 ただし、当該申請書を作成することができない特別の事情があるときは、この限りでない。」と規定しており、当該規定も書面による申請を保護の要件としているものではないと考えられる。 したがって、申請は必ずしも書面により行わなければならないとするものではなく、口頭による開始申請も認められる余地があるものといえる。

 一方で、法第24 条第3項は「保護の実施横関は、保護の開始の申請があったときは、保護の安否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもって、これを通知しなければならない」としているなど、保護の申請は実施機関側に一定の義務を課すものとなっている。

 確かに前記のとおり、申請書の提出自体は保護の要件ではなく、一般論としては口頭による保護申請を認める余地があるものと考えられるが、保護の決定事務処理関係や、保護申請の意思や申請の時期を明らかにする必要があることからも、単に申請者が申請する意思を有していたというのみでは足らず、申請者によって、申請の意思を明確に表示することにより、保護申請が行われたかどうを客観的に見ても明らかにしておく必要がある

 

 したがって、口頭による保護申請については、申請を口頭で行うことを特に明示して行うなど、申請意思が客観的に明確でなければ、申請行為と認めることは困難である。 実施機関としては、そのような申し出があった場合には、あらためて書面で提出することを求めたり、申請者の状況から書面での提出が困難な場合等には、実施機関側で必要事項を聴き取り、書面に記載したうえで、その内容を本人に説明し署名捺印を求めるなど、申請行為があったことを明らかにするための対応を行う必要がある。

 なお、申請にあたって提出された書類に必要事項さえ記載されていれば、たとえそれが定められた申請書によって行われたものでなくても、有効となるので留意が必要である。