昨夜22時。アルバイトが終わった一姫から電話。
「友だちの家に泊まる」

できないよ、と答えると電話が切れた。
仕方ないのでまたカニ男に電話をして、できないと言って欲しいと頼む。
一昨日私が自転車をとりにいって、一人暗がりで飲んでいたのが自分に対する当てつけだと思い込んで、気に入らないらしい。

そのすぐあとに一度帰ると言って、23時、帰ってきた一姫。
もう一度泊まりにはいけないよ、というと暴れ出した。
またもや「出て行く、出て行かない」の言い争いで、取っ組み合いになっていると二太郎がたまりかねて起きてきた。
一姫に手を出そうとするので、必死でそれを止めようと絡み合う。

私より随分大きくなった二太郎の力は思ったよりずっと強く、本気になれば一姫の腕くらい簡単に折れそうだった。絶対にそれは避けなくていけない。
わめきながら、二太郎を引き離し、一姫に馬乗りになって止める。

一姫よりだいぶ体重が少ないとはいえ、人ひとりが体幹に馬乗りになれば、さすがに動けない。
今日はなんとしても家から出してはいけない。
直感でそう感じた。
さて、誰か頼れる人はいるか。

隣家の私の実父母はだめだ。
事態がややこしくなるだけだ。
隣の市に住む義両親は?
だめだ。義父は歩くのがやっとだ。

そのとき、
「お父さんに電話するから電話を、持ってきて」
とそのままの姿勢で一姫が、言った。
二太郎に頼んで受話器を持ってきてもらうと一姫は110番通報した。
「母親に殺されそうです」

そうか、警察だ。
受話器を取り上げて、状況を説明し、すぐに来てください、と頼む。

数分後、交番勤務らしい巡査に続いて地元の警察署から2名の警察官が来た。

1人の女性が一姫の話を聞く、とそばについてくれ、やっと私も解放された。

その後、一姫と、二太郎と私に分かれて事情を聞かれ、その後どうなったと電話してきたカニ男も警官に促され、滞在していた都内のホテルから呼び戻された。

暴れる一姫を押さえつけたときにぶつけたり、擦ったりしたひじやひざ、手首が痛い。