ずうっと前から意識はしていました。
北風と太陽

のこと。

もちろん、太陽になりたい、と。

でも、現実には一姫と二太郎に対して、カニ男に対して、ずっと北風です。そして、自分に対しても。

だから、ずっと寒い、冷たい。
自分が一番寒い。

昨日、先生の都合で部活が休みだった二太郎から夕方電話。

一昨日の合唱祭の打ち上げ、駅前のサイゼリヤだけど行ってもいい?

これまでの私なら即座に
だめ。
急に当日ごはん要らないなんておとうさんだってやらない、そんなの中学生の分際で絶対だめ。

と答えていました。
昨日はその場はあまり深く考えずに
いいよ、と答えていました。

喜んで出かけて、約束した時間より随分早く帰ってきた二太郎。

「男子は3人しか来られなかったんだ。
俺もだめだって言われると思ってた。」

と少しうれしそうに、言いました。
やっぱりだめって言われると思っていたのね、と思いつつ、日々色んなことをきちんと、こなしていれば出来ることは増えるんだよ、と説明しました。

一姫にも、同じように説明してきたつもりではいますが、一姫からしてみれば、自分のときはもっと厳しかった!と感じるのかもしれません。

もっとも、中学生のころの一姫は友だちとの付き合いを最優先にはしていなかったのですが。

昨日二太郎に、あっさり「いいよ」と言えたのは、私は二太郎を信頼しているよ、ということが伝わる、伝えられる、という自信があったからだと思います。

一姫が、高校に入ったばかりのころ、毎日のように友だちとごはん食べて帰ってもいい??お金ちょうだいって言われて、私は北風になりまくっていました。そして、一回目の考査で無残な成績をとってきたとき、一姫に対する信頼が崩れ落ちたのでした。

それからは北風でしかなかった私。いま思うと一姫は頑なにコートの前を合わせ、着られるものはなんでも着込んで寒さに耐えてきたのでしょう。

でも、太陽はどんな人にも平等に太陽でいるのが当たり前です。

一姫がどこへ向かおうとしている旅人であっても、その道中で、どんな方法で、どんなエネルギーを得ていたとしても、私は太陽でいるべきだったと思います。

本当にごめんね。

一姫は2日後、修学旅行から帰って、代休にはまた友だちのところに泊まると言っていました。

それが本当でも、そうでなくても、もう私は突然辻に現れて道を教えてあげる老人や、しばらくお供として歩く森の動物にはなれないのです。

遠く離れてその行方を追う北風か太陽しか選べません。
ならば、太陽を選ぼう。

自分が寒くなりたくないから。
冷たくなりたくないから。
理由はそれだけ。