昨日の深夜、一姫は何も持たずに、出て行きました。
携帯電話もお財布も何も持たず。

今日は義母が怪我をして動けないので、カニ男の家に御用聞きに運転していかなければならないので、眠らなくてはと思いつつうとうとしながら朝を迎えました。

一姫は帰りませんでした。

それでも、生きてるってなんだか恰好の悪いもんです。やることは次々あって、なんとなくこなさなければならない。
ドラマみたいにひとつの出来事に浸ってはいられないんです、現実は。

カニ男の実家に行き、当座の買い物をし、二太郎の練習試合の会場に新しく部で購入したキャリーバックを届けました。

その間に迷った挙句、警察に身元不明の事故がなかったかを問い合わせ、一姫のアルバイト先の店長にことの顛末を話して、一姫がつきあっている男の子に連絡をくれるようにお願いしました。

もしかして一姫が帰っているかも、と早めに帰宅すると、
昨夜、電話で一姫に
「この家をでて行くから!」
と宣言されて、仕事をキャンセルして帰ってきたカニ男が。

二人ともだんまりを決め込んでいましたが、一姫から家に電話がきました。

「生きてた!」
正直な気持ちです。

私はなにも話さず、カニ男に代わってほしいというので、電話を渡しました。

ふたりで駅前で会う約束を取り付けたあと、やっと私から重い口を開き、いったいどう話すつもりなのかをたずねました。

しかし、カニ男は相変わらず、
「オレはオレのやり方で話す。君に話すつもりはない」
の姿勢。

価値観をぴったり合わせろとは言わないけど、私たちは親なのだからある程度の方向は合わせておくべきなのでは?
というような趣旨のことを話すと

「べき」とか「~じゃないとだめなんじゃない」
という言葉が癇に障ったらしく、声を荒げて、
「なんども言っただろ、今更なんなんだよ!!」

と怒り出しました。

以前なら、ここで私も大声を出しましたが、今はそんなエネルギーはありません。

「一姫と二太郎のために、協力してください。お互い話し合って子供に接してください」

と土下座して手をついてお願いしました。
それでも、
「いまさら」「許せない」
が続きました。

私も、ああ、もう本当にだめなのかもな私たちは。
と心のなかで思いました。

でも、でも諦めきれない。
楽しかった家庭が。
自分の選んだ男を信じたい気持ちが。

なんて往生際の悪い…。
でも、決定的に  でて行く、出ていけ、
と言われるまでは黙っているつもりです。
万に一つでも楽しかったころに戻れる可能性があるなら。


カニ男と一姫はもう一時間半お話中。

帰ってくるのかな。

カニ男に離婚宣言されたときは平気でご飯を食べてる自分に呆れたけれど、今日は1日なにも食べていない。