2か月前から関わっている60代の女性がいます。


生活保護を受けながら、娘さんと猫6匹と一緒に、

賃貸の一軒家で暮らしていました。


その家は、いわゆる

「ゴミ屋敷」

と呼ばれる状態でした。

床が見えず、靴を履いたままでしか入れません。

6匹の猫があちこち破って

襖も障子もボロボロ…。

お風呂場も物であふれ、

使える状態ではありませんでした。

冷暖房もありません。


そんな中、がん治療を始める話が出ました。

抗がん剤治療が始まると、

    体の抵抗力が下がります。

感染症にかかりやすくなるため、

主治医からは

「今の住環境では治療を始められない」

と言われました。


ケアマネジャーが生活保護課と相談し、

治療の間だけでもアパートへ

引っ越すことになりました。

(猫は娘さんがみることに。)


しかし引っ越しまでには時間がかかります。


その間少しでも感染のリスクを下げられるように、

まずはお風呂場を片付け、

入浴できる環境を整え、

週に2回の入浴をはじめました。


そして今月、

やっとアパートに引っ越すことができ、

治療も無事に始まりました。


医療的に見れば、安心できる環境です。

きれいで、エアコンもあり、

衛生面の心配も少ない住まいです。


けれど、本人は毎日こう言います。


「家に帰りたい」

「こんなとこじゃ落ち着かない」


あの家は、寒くて、散らかっていて、

感染の心配もある場所でした。


それでも、そこには

娘さんがいて、愛猫がいて、

長年暮らしてきた時間があります。


私たちにとっての「安全で正しい環境」と、

本人にとっての「落ち着ける場所」は、

必ずしも同じではないのだと気付きました。


  良かれと思った命を守るための選択が、

     その人の安心感と

    引き換えになっていないだろうか。


そんなことを、ふと考えます。


支援とは何か。

正しさとは何か。


答えは簡単には出ません。


迷いながら

葛藤しながら

それでも、彼女に寄り添い

帆走していくしかないのです。